【01Blog】TechStarsによるメンター主導型アクセラレーターに関して

2014.11.12

起業生存率90%以上を誇るアクセラレーター「TechStars」とは何か?

01Booster

この記事によると全米2位(この分野では世界2位と言っても良いでしょう)のアクセラレーターがTechStarsです。1位はY Combinatorとなります。米国を除く地域では買収してくれる会社がそこまで多くは無いと思いますのでどちらかというと大量に起業させて成長企業を見つけるY Combinator型は難しいかもしれませんね。日本はアメリカを模倣する傾向が強いのですが、環境は大きく異なりますので、個人的には欧州の方が合うと思ってます。この点、気をつけなければなりません。人口一つとっても日本は減りますが、米国は先進国では珍しく増えてますから。米国のモデルはそのままでは日本適用が極めて難しいと考える必要がまずあります。

Population_01

http://naglly.com/archives/2011/01/population.php

さて、それはともかく、TechStarsは2007年からアクセラレータプログラムを開始しておりますが、失敗した(会社をCloseした)のが9.9%、買収されたのが11.7%、未だに生存しているのが78.6%と、生存率と買収された会社数を合わせて90.3%というハイスコアなのが特徴です。時系列で見たのが下図です(TechStarsの統計資料より)。初度の頃は失敗も増えてますが、相当数買収されてますので、全体として高い生存率になっております。 01Booster TechStarsの特徴を簡単にまとめますと下記になります。(TechStarsが主導するGlobal Accelerator Networkからも抜粋)
  • 3-4ヶ月の短いプログラム
  • 1個のプログラムで最大10チームほどの少数チーム制とする
  • プログラム参加チームにはオフィススペースの貸し出しが必須
  • 運営者が起業家であること
  • 6-10%のマイナーシェアを取る
  • 40-80名のメンターを1個のプログラムにアサイン
補足しますと、チーム数を10チーム程度までにすることで育成に手が届くようにしていること。計画的偶発性を起こすためにリアルに会える場所(オフィス)を無償で貸し出すことが必須。運営者は起業家であることで(多分、フルコミットではない人も入れて)、起業家の気持ちが分かるようにしている。マイナーシェアを取ることで起業家である運営者のインセンティブを担保(起業家がアクセラレーターを運営したほうが良いが、一般的に、通常はやらない。何故なら、起業家は自分のために働くことを知っているので人を助けたいとは思わない。このインセンティブ設計が極めて重要)。企業コラボでもメジャーシェアは取りません。日系は所有したがる傾向がありますので、メジャーシェアーを取りたがりますが、それでは駆け出しの起業家を集めることは可能でしょうが、正直良い起業家を集めることは難しいでしょう。自分のために働くことを知っている起業家の心理を理解する必要があります。 メンター主導型は下図のイメージです。

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企業(Qualcomm、ディズニー、Kaplan、Sprint等)とのコラボ案件では企業側から事業の専門家を出し、社外の起業家や投資家を含めたメンター、TechStars関係者で40-80名という布陣です。日本でも話題になったディスニーアクセラレーターに至っては総勢143名もメンターが確認されました。 メンターは特に起業家である必要は無いでしょう。例えばディズニーには起業は得意ではないかも知れないが、フィルムの目利きであれば凄いといった専門家は居るはずです。この専門家がサポートすれば確かに生存率も上がりそうですね。 日本のアクセラレーターではメンター陣が著名ではあるんですが実際には忙しくてなかなか相談できる感じではない(名前貸しに近い)場合や、人数が少なくてステージ毎に聞きたいことが変わるのに対応できないなどが問題点として指摘されております。コアの部分のメンターはTechStarsの人などでいいのでしょうが、ステージによって聞きたくなる専門的なアドバイスはそれぞれの専門家やメンター陣やその知り合いから得ることができるシステムです。 コラボする企業側もマイナーシェアしか取りませんので、経営権を取ることは無く、起業家は自由に活動できます。しかしながら、企業からのメンターがアドバイスに乗るのですから、買収されるにしろ、その後、提携するしろ企業とベンチャーは良好な関係が築けると思います。 結局は人ですから。 そのことをよく分かっているシステムですね。また、企業ではなく、第三者であるTechStarsがプログラムを運営することで彼らがカタリストとして機能し、企業側のエゴを吸収して産業全体を盛り上げるというポジティブなムーブメントを興していると思います。 約32億円の調達を実施しておりますが、米国のモデルは国土の面積の違い、意思決定の順番の違い(米:仕事をしてジャッジ、日:仲良くなってから仕事)、雇用流動性(ロイヤリティ)、買収数などの面で日本とは大きく異なります。これを加味すると、Y Combinatorはともかくとしても、TechStarsでもそのままは日本では難しいく、それに近い形でしっかりと日本にローカライズしたものが日本では一番風土に合うんだろうと思っております。

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