【01Blog】技術が重要ではないとは思わない、でもそれが全てではない

2015.03.07

技術神話を捨てて、客観的に本質に向き合える日 私は元々、学研さんのひみつシリーズを読んで、本当に小さいころの夢は博士(博士がそもそもなんなのかも知らずに)になることと書いてあり、理系の大学院を出て研究者以外には全くなりたくないという視野狭窄な状態で就職してます。才能は正直なかったと思います。但し、R&Dは真理追求です。尊敬する研究室の教授の言葉を思い出します「自然は嘘を付かない」。物を無くしても「世界のどこかにはある」。つまり、それをどう解釈するか、見つけられるかどうか?は人間側の問題であって、自然自体の答えは一つ(あるいは一つという概念も正しくないかも知れませんが、と哲学的になるのはこれぐらいで)というものです。 この真理追求の考え方は実はコーポレートマーケティングの時に役に立ちました。「スペックを決めているのは何か(誰か)?」を考えるからです。いわゆる根源ですね。小生の16年間の会社人生は長い間「技術者という誇り」を捨てるための闘いとも言えると思ってます。 IMG_9532 電機メーカに居た頃、景気の極端な悪化で物が売れなくなりました。それまで技術的に素晴らしい上司の方々が右往左往するのを見るに僕の技術神話へのコダワリは一つ分岐点を迎えました。つまり、技術だけで物事は決まらないのです。なんと、世界に5社しか創れないブレーカーのお化けのような遮断機を日本の3社が創れるという異常な技術集積の状態です。その頃、初めて世界の状況を調べました、GEやABB。彼らは技術力もありますが、本質的にはビジネス構築(いわゆる投資してビジネスを構築する商社に近い)です。例えば、ケニアのナイロビの送電路を創るが同時に投資も運用もして、お金を取るのです。簡単に言えば「物売り」だけではない。技術はありますが、それよりも高い概念でビジネスを押さえるのです。 部品メーカに居た頃。大きな変化がありました。それまで携帯電話を牛耳り、この世の春を謳歌していたNOKIAが大幅にリストラを実施しました。不沈空母が沈む勢いです。Googleという新手のハードメーカー?とも思えないところが出てきました。NOKIAを辞めた人に聞きました。NOKIAは何故落ちたのか?と。そしたら「ハードウエアにこだわり、それを変えることはできなかった」と。 もちろん、ハードウエアだけが技術ではありません。ソフトウエアも技術です。私が言いたいのは技術自体が悪いわけではなく、時にはコアとなるようなものもあるでしょう(わかりやすいのはHDDからSSDへのイノベーション)。しかし、多くの場合、技術だけでは決まらないし、我々日本の企業が技術で勝ってきた過去があるだけに、技術の決定要因が20%ぐらいなのに、それを60%とか80%ぐらいあるかのように考え方がシフトしているのではないか?ということです。時には技術ではなく、ベタベタのドブ板営業が重要な場合があります。どんなに良い技術を持っていても売れなければそれまでです。 IMG_9530 最近は、多くのR&D系の人とも話しをします。ある程度共通して思うのは、技術が良ければ(物が良ければ)売れるとかなりの人が思っているということです。また、R&Dもシーズ型の物が極端に多い。そもそも、市場はそれを欲していて、世界を良くするためにそれが本当に必要なのか?という本質的なところに問題があるケースです。つまり、本質の議論や上位概念で考えられているというよりも、研究を続けるためにやっているようなものが多いということです。つまり大志が無いんです。確かにすごいかも知れないが、これがいったい何になるんだろうか?というものです。 2つの概念を。 一つは戦略の階層。技術は下のレイヤーです。日本がここが強いのは分かった。例えば、Appleは上位概念で勝負してます。一方、技術の部分は日本や韓国のベンダーから買ってます。この奥山先生の戦略の階層は非常に私にしっくり来ました。日本でもiPhoneは創れた!とある研究者が言いました。また、ちょうどiPhoneが出たころに端末メーカの人とも話しました。電池が交換できないのがどうのとか。議論のレイヤーが非常に低いのです。さて、話を戻し、日本でもiPhoneが創れたとその人が言っているのは下位レイヤーの「タッチパネルの技術」です。一方、アップルが創ったのはまさに上位概念の世界観・政策レベルです。技術レイヤーが日本は強いのであれば、より上位概念を押さえれば強くなるのです。「下位概念だけ」で勝てると盲信していませんかと。しかも、Appleが真似したかどうかは分かりませんが、imodeが日本には元々あったのです。世界観を創れないわけではない。問題はもっと高い世界観なんです。
  • ユーザインターフェースであるiPod/iPhone/iPad/Apple TV
  • インフラネットワークであるData Center/CDN(Contents Delivery Network)
  • 全体を司るiTune/AppStoreシステム
  • 音楽や開発者のコミュニティ
  • Appleという情熱を覚えるブランド、Steve Jobsというカリスマ
b0015356_16175449http://geopoli.exblog.jp/19661333/ もう一つが新しい市場のつくりかたの三宅先生の本です。この本は素晴らしいので是非、技術者や研究者の方には読んで頂きたい。技術は「ニーズ(課題)」があって「それを解決する技術」があって「その技術を利用できるインフラ」があって「それを認知する」ことで初めて使われます。つまり、アイデアと一緒でそれだけでは意味がなく、その技術が多くの人が困っている深刻な課題の解決になり、かつ、それをサービスや商品という形で作り上げ、売るための営業やマーケティング機能、これらを動かす膨大な「行動」があって初めて成り立つのです。 R&D系から色々な技術の製品化を外に任せたいという話があります。でも、それはアイデア偏重と同じだと思います。技術がダメであると誤解して欲しく無いですが、あくまで実践や行動、ビジネス化という途方も無い努力のもとで初めて花咲くものであることを今一度お考え願いたいと思っているのです。 昔、技術系のマーケティングを実施して、そのR&D商材の商品化の難しさを感じた日々を思い出しながら書きました。

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