01Blog / 大企業を辞めて起業する方へ

2016.02.11

大手企業を辞めて起業する人が最近は非常に増えていると感じています。そのような方とディスカッションする機会を最近だいぶ持ちました。私個人としては社会人経験のある方々は成功確率も高いと思いますので、是非、頑張って頂きたいと思います。一方で、大手企業を辞められた方は色々考え方がシフトしているケースが有ります。ここに少し大手企業から起業される方への注意事項に関してまとめてみます。

1. 起業の能力は一からであると理解する

その人の素質は先天的なものだと思います。しかしながら、起業の筋力は起業された後に鍛えられるので、逆に先天的に能力がある人はこの点を留意する必要があります。特に日本では起業の能力は鍛えていないので弱いのと、大きなビジネスを考える上でのメンターも少ないのが現状です。但し、それを超えてしまえば、自分の脳力は付いており、次のステージに向かえます。

起業支援をしていようがVCをしていようが大企業でベンチャー連携をやっていようが「起業の能力はない」と思ってことにあたって下さい。多くのそのような方々が自分の番になるとメロメロになるのを見ています。

2. 大手企業での嵩上げを相当意識しておく

台座に載って仕事をしていたということを相当意識しておくと良いとは思います。この嵩上げ分は自分ではなかなか理解しずらいところです。能力が無いというよりは自分でどこが嵩上げされていたかを自己認識するのが難しいところというイメージです。起業すれば会社名は誰も知らないですし、信用も全くありません。但し、大手に務めていたことは一つの信用になりますので、有利な部分もあります。「肩書捨てたら地獄だった」も参照下さい。自己認識の問題です。

大手企業は累積戦略というのが非常に効いています。この長い間の積み重ねは半端無く強い。特に名前の売れているところ、新規事業が得意と言われているところの方ほど留意を。能力がどうか?というより起業能力と自己認識が極端にずれてしまうのが問題だと思います。

3. カオスという悪魔とアイデンティティの欠損に留意

高校、大学、社会人と「どこどこの誰です」といえるのは実は人間にとってとても大きなことだと思います。アイデンティティというのは欠損すると自分が誰で何をやっているのか?が最初は定まらない。毎日が夏休みともいえる自由という名のカオスという悪魔は非常に悩ましいものです。誰もが通る道だと思って良いかと。会社でやられたことをそのまま引き継いでいる場合、ラーメン代稼ぎで受託やコンサルなどを実施する場合を除き、自社サービスを実施するときは2年間はおよそ「無給」「何が正しいかわからない」という状況が続きそうです。つまり、産みの苦しみです。但し、産んでしまえば会社と異なり自分のアセット(資産)になるところが大きく違います。

カオスは半端無く大変ですね。特に象徴的な上位概念(自分はなんのために生きている・事業の意味とは?)を考えていない傾向が日本の場合は多いので、より悩む傾向もあるとも思ってます。

4. 給料が出ないという恐怖

起業ではアセットは自分に紐付ますので、長期的なリスクはヘッジできます。短期が問題。できるだけ二足のワラジ、貯蓄、などなど、短期的リスク回避をしてから望むのが良いかと思っております。場合によりご家族がいるなかで給料は出ませんので、蓄えは減っていきます。これは非常に精神を痛めます。寝れないというものですね。これも一つの超えるべきかと。また、できるだけ、理想を追いすぎず、長期の理想を持ちながら、足元は現実的にキャッシュを稼ぐということを意識する必要があるかと思います。失敗は相当するので(逆にしない方が後々苦労する)、何回サイコロを振れるか?だと思います。

貧すれば鈍するという事を意識しましょう。真の理想主義者は現実主義者。(往々にして面白く無い)粗利の高いものでキャッシュを稼いで、(方向性だけは理想が達成する方向に向けて)粗利の低い方を後で。

5. 人に気をつける

大手企業の場合は長期雇用をベースに動きます。このため、社内や社外との付き合いで比較的変なことは起きづらい傾向にあります。大手企業の方は給料が出ていますので、短期的に何も動かなくてもあまり痛くありません。起業ではそうは行きません。また、頭ではなんとなく給料が出ないというのは分かっても、大手の方もそれをハラオチさせることはできませんので、言っても効果はあまりありません。情報だけ取られたとか言っても意味が無いわけです。一緒に起業で組む人もロイヤリティはそもそもありません。なので、今までの人間関係とかなり変わるので、この点は特に留意を。人間不信になりそうだー。という声も聞きますが、それが実際の社会だと思うのです。

相手は理解できない。相手には理解させられない。というのであればどうするか? 人には期待せず。人には油断せず。

6. 規模化を意識するのも良い

会社にもよりますが、大手企業の場合、一人あたりの売上は数千万〜億ぐらいかと(商社とかは高いですが)。ここは生き方の問題になりますが、社会的価値は金額とも言えますので、せっかく企業を辞められたらなそれなりに大きなビジネスをやらないのであれば、時間はかかっても会社でやった方が社会への貢献は大きいともいえます。

7. そもそもやりたいことがしっかりしている人は少ない

あまり一般では思われてませんが、そこまでやりたいことがはっきりして起業している人は実際には少数派だと思います。初動はほぼ失敗するので、致命的な失敗をしないというのが肝要だと思います。逆にフレキシビリティが落ちるので無いほうが良いとも思えます。何か凄い志が必要か?というとそんな人は殆ど居ないのが現状かと思います。

8. 綺麗な話は少ない(誇張されている可能性が高い)

良い物を創れば売れる。ということはなくて、実際には相当地道な営業を実施して成功しているケースが殆どです。しかしながら、そういう話はそこまで世間ではウケませんので。なので、常識や思い込みというものを一回捨てて、事業を勝つために何が必要か?というのを教科書に頼らず考えて行きましょう。

9. できれば準備練習を

正直、最初の起業はほぼ失敗すると思います(初度に考えたビジネスモデルはピボットすると思った方がベター)。もちろん、最終的に失敗しなければいいので、色々施策するのですが。但し、あまりにも起業や経営が初めての人が多いのも事実なので、一回はベンチャーに入ってみる(できれば創業期2−5名の)、何か、小さくてもビジネスをやってみるというのは良いかと思います。

10. 自分の経験を活かしている

会社勤めをしているのであれば、何かのアセットを持っていると思います。事業セグメントは違ってもこの過去の経験をベースにしているケースが多いです。例えば、研究開発は市場調査と「調査」という面では似ています。何がしかの過去の「能力的アセット」を活用するのは一つの王道ともいえます。

など、色々ありますが、大手企業は起業から見ると、あるべき姿とも言えますので、その姿を知っていることは大きなビジネスを創る上でプラスにも働くと思います。また、起業はやはり楽しいものです。多くの人が起業はリスクが高いと思ってますが、私はリスク回避として起業するとも思っております。実は、起業すると転職が簡単になったり、年齢制限も取れたりします。ビジネスが立ち上がってしまえばそれは自分のアセットになる点は大きい。なので、悪いことばかりではありません。むしろ、良いことも多いのです。

是非、多くの方が起業という選択肢を持ち、世界を変える一員として起業の世界に参加して頂くことを心より祈っております。

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