01Blog / 社内起業はなぜ、なかなかうまく行かないのか

2016.02.18

社内起業がうまくいかない理由は多々あると思います。これは様々に言われているので、検索しても数限りなく出てきます。

「それを言ったらおしまいよ・・」となりそうですが、非常に極端に言えば、会社が潰れるぐらいに困っていれ(まだリソースが残っている状態で)ば上手くいく確率は相当あがると思います。本当に危機になれば、事業創造に対して直線的な行動をすると思います。しかしながら、多くの場合、まだ余裕があるので、例えば、海外の会計をやるのに社内に専門家が居なくても、社内に「日本向けの」人が居るのでそこにとか、様々な事業上の足かせをはめてしまうケースが多いと思います。

問題は外部は自由競争していることなんです。

いやいや「本当に困っている」というふうにおっしゃる方も多いのですが、敢えてそれは本当なのか?と言わせて頂いたほうが良いと思ってます。

ただ、逆に言うと、給料は出るので、生活的な不安は直ぐに生じないものの、起業以上に社内圧力に対しての負荷がかかるのが社内起業であるとも思っています(中には良い制度を持っていらっしゃる会社もありますが)。このため、相当困っている状態ではないとなかなかできないというところではあると思います。

1. 規模が大きい物を求められ and/or 飛び地の場合に「エコシステム投資」をしていない

確かに企業のリソースは素晴らしいのですが、人件費も高いのです。積み上げてきたもので勝負する場合は自社でもいいですが、人件費が高いですので、飛び地は社外も活用。社外と一緒にその市場にエコシステム投資していくというのが先進国の標準です。

2. スタートアップと同じことをしている

1. に通じます。現在は結構、優秀な人もどんどん起業しだしています。同じことを同じようにやったら人件費でもスピードでもスタートアップには敢えて言わして頂きますが「絶対に」勝てない。信用や営業力があるので、確かに勝つ場合はあると思います。ただ、日本は競争環境が緩い事をお忘れなく。

なので、もっと、上位概念を設計すべきではないか?と思うのです。アプリを創るのではなく、アプリマーケットを創るのが企業側ではないかと。もっとインフラとして動かないとそもそもコストが合わないかと。仮にアプリを創るのも悪くはないですが、あくまで企業リソースに紐ついた他社が真似できない場合かと。

3. ロールモデルが居ない

これは大きいと思います。社内でその手で成功しているモデルが少ない。それがある会社は良い。例えば子会社で片道切符でもいいんですが、戻れたとしても、失敗して戻れば当然学んでいるわけで、昇格しても良い。そんな事例があると強そうです。ここは他社のリアルな事例を知るのもありかと。メディアではなかなか本音も言えないので、オフサイトでいいので、同業ではないのであれば他社と交流して情報交換してはどうかと(愚痴の言い合いに陥るのはNGですが)。

4. 極端にリスクを取らない

失敗したら戻ればいいは社内起業の敵」という経産省系の資料があります。私はそこまでは思わないのですが、極端にリスク回避をされる方がいらしゃるのも事実です。社内起業であれば首にはならないので、最低限のところは確保されているので、そこまで過敏にならなくても、と思うことがあります。社内で喧嘩はしなくてもいいですが、敵は創らず、最初は否定されますが、結構、良い人の方が多いので、色々動いてみても損はないかと。

5. サイエンスとテクノロジーの違いを抑える。

これは最近、某技術系データーの社長さんから教えて頂いた名言です。テクノロジーでは差別化できない。サイエンスが必要とのこと。まだ、意味を解読できていないのですが、一般論として、ビジネスモデルと個別製品は異なる気がします。多くのビジネスプランのピッチを聞くのですが、製品の話をしているケースとビジネスモデルの話をしているケースに別れます。Wikiによると、

ビジネスモデルとは、利益を生み出す製品やサービスに関する事業戦略と収益構造を示す用語である。

とのこと。つまり、どういう世界を創りたいか?どういう事業を創りたいか?で差別化されるのであり、テクノロジーや製品だけではビジネスではないというところですね。

6. 求める事業規模とビジネスモデル(?)階層のミスマッチ

事業規模が100億以上というようなビジネスではないと、、というのは非常に良く聞く話です。一方で、そこに対してのビジネスモデル(では多分無い)が、個別製品の開発である場合も多いですね。話をしている階層が違う気がします。製品の階層(ものによりますが数円〜数億の次元)ービジネスモデルの階層(億〜10億の次元)ー事業部の階層(10億〜100億)ー会社戦略〜エコシステムの階層(100億〜1000億〜兆〜)。例えばどーんなに素晴らしく、真似できなく、誰もが欲しがる魔法の製品を得ても100億を1人で回せますかね?考える階層が違う気がします。

7. アイデア偏重主義とアイデアの判定が自社では難しいこと

ペットボトルの水の話を良くしてますが、これは30年前であればありえないアイデアですね。文化を変える大型のアイデアは現時点の自社のメンバーでは(他社でも)理解不能です。次に、アイデアは行動を伴わなければ常に絵に描いた餅を超えませんので。累積型のアイデア(何かを実施していくことで新しいアイデアに昇華していく)が重要かと。どちらかというと、それが今からペッドボトルの水を売るでもいいので、どれぐらい大きなビジネスモデル、事業モデルまで構想できるか?の方が重要ではないですかね?

8. 弱い紐帯の部分が弱い

アイデアの部分もありますが、常に同じ会社の方の話はシフトします。自社製品・サービスに縛られる。弱い紐帯の強みを意識するのが良いかと。

9. 実施する方向にベクトルが向いていない

この点はかなり大きいですね。7.のように大きなビジネスアイデアは初動では「は?」という感じです。いかようにも否定可能。前に進まないと常に止まったままなのですが、始める前に議論をしても「必ずビジネスモデルはピボットする」「どんなに優秀な人間でも最初のプランはボロボロ」の二点が重要です。問題点を探すのではなく、それをどうやったら克服できるのか?という議論が必要です。

できるかでいないか?という議論をするのではなく、やるかやらないか、やる場合は、どうやったらうまくいくか?どうやったらもっと大きなビジネスモデル、事業部、事業戦略になるか?という議論に切り替えるべきです。

10.外部リソースが上手く使えない

新しいことを実施するわけです。スタートアップでは理想を言えば、そのビジネスを実施するために世界で最高の人を集めてチームアップします。それに対し、例えば、海外向けのサービスで全員日本人とか、女性向けのサービスで全員男性とか、B2C向けのサービスで全員のバックグラウンドがB2Bとか。世界では自由競争しているわけであり、自社基準は意味を持ちません。社内起業が起こし易い会社では外部リソースを使うことに制限があまりありません。是非、社外と・海外と比べてどうか?という視点を。

さて、今一度考えるべきなのは、自社を出れば世界は自由競争しており、大きなビジネスとなればなるほど競争が激しくなります。会社が積み上げてきた累積の部分は極めて強いものではありますが、「事業創造を興す」という目標に沿わない事を実施してもやはり新規事業は起きないと思います。時間は貴重な資源です。一番の問題は中途半端な事を行うと社内がどんどん疲弊します。せっかく考えたのになんだ!?と社内のモチベーションも落ちます。打ち手もどんどん損なわれます。そのような事例を本当に多く見てきました。

是非、事業創造を興すという観点で、社内での常識や慣例に囚われず、正しい意思決定をされることを切に切に願っています。

・・・