01Blog / もしも本当に破壊的イノベーションを社内で興そうとするならば

2016.09.18

過去にも自社内で破壊的イノベーションを既存企業の社内で興せた例はあると思います。問題は・・

世界的に市場が停滞することで、新しい市場を形成する破壊的イノベーションに多大な投資や人材の集中がされており、イノベーション分野が高速化して、競走も激化している。その中で、途上国の追い上げも厳しく、イノベーションを低い賃金でも行える土壌が出来上がってきた。この結果、経営的にも過去からの積み上げてきた累積戦略ベースの持続型イノベーションしか意思決定が難しくなってきている。そして、持続型と破壊型の考え方・手法が間逆であることから、より、破壊的イノベーションを興すのが既存組織では難しいというジレンマに陥っている。

ということだと思います(関連記事 : 文化の出来上がった企業でイノベーティブな新規事業を興すということ)。では、本当に既存社内で破壊型イノベーションの新規事業を起こすとしたら、どうやったら良いのかを少しまとめてみます。これはまさに相当数の企業とのお付き合い、そして、大企業とベンチャー企業双方の経験からまとめたものです。

素晴らしいでは足りない

これは全体的にいえることですが、確かに社内で様々なしがらみや反対を押し切って事を推し進める事は本当に素晴らしいですし、インセンティブがそこまであるわけでもない中で頭も下がりますが、世界にはその会社しか無いのではないので、多くの場合に80%ぐらいは正しいかも知れないが、20%がおかしいという施策をたくさん見ます。それが長い工程の一部であればそれも良いでしょう。しかしながら、多くの場合、かなりキーの活動だったりします。

新事業を評価するのは社内ではなく、あくまで市場であるという当たり前のこと

星野リゾートの星野代表の「経営の教科書」どおりに徹底的に実践するといい という記事がありますが、問題は「徹底的にできるか」ですね。どこかに社内の事情が入ってしまいます。

多くの失敗した施策は施策自体に問題があるというよりも、施策の徹底に問題があったのではないでしょうか。

例えば、シリコンバレーで出資活動をしたとしましょう。長くいて、人間関係を創り、コアのコミュニティにアクセすることと、また、起業経験のあり、かなりの高学歴がVCをやっているような世界です。いくら優秀だとしても数年のローテーションの社員が派遣されても結果はでないでしょう。こういう類のことです。社内的にはシリコンバレーで出資というのは様々な軋轢の中で意思決定しているので素晴らしいですが、市場から見たら足りないということです。

確かに施策は実施されれいる。しかし、それは本当に効果的だと言えるのか?

破壊型新規事業の評価は市場がするという当たり前のこと

広告代理店に代表されるように「世論を創る」という形もあります。このため、全てがNGであるとは思わないのですが、多くの場合、社内起業の場合は下記の問題があります。

市場ではなく、上司や会社などの内部の人の評価となる

市場もはっきりしなければ、現時点では狂ったアイデア(良識という名の未来の非常識を捨てて、未来には常識となっている今は狂っているビジネスを追え!)こそイノベーティブなので、これを社内の評価に頼ることは基本的に不可能だと考えたほうが良いです。なので、社内起業で最も求められるのは、

誰にも止められない狂ったような熱情

他にありません。勝てば「僕・私もそうなると思っていたよ」と言われますが、うまくいくまでは自分とその理解者以外の社内の全員が間違っているというジレンマにぶち当たります。多くの人がこの時点で「会社は分かっていない!」と別の方向に走ってしまうのではないでしょうか。正しい野心をもって破壊的イノベーションを会社のために興そうという人は「会社は分かっていない」し「その時点では間違っているのです」。

良く映画で、宇宙人の侵略者が来て、自分は見た、でも周りが信じないというストーリーがありますよね。まさにこれです。周りから見て「馬鹿げた」ビジネスを成功させるには自分を信じた熱情が必要です。

市場の認識の問題

市場の認識は厳しいです。弱い紐帯の強みを使わなければ。同じコミュニティーは同じ結論を、それ以外のコミュニティから見たら、びっくりするような形になります。例えば、シニア向けのビジネスが伸びているとしましょう。この分野でビジネスを考えた場合、化粧品の会社は最後に化粧品を売ろうとするし、車の会社は最終的に車を売ろうとするでしょう、ゲームの会社はゲームをさせようとするでしょう。これは本当に起きます。つまり、ゴールがかなり偏っているのです。強みで闘うという点はもちろん理解してますが、余りにも自社の既存事業に振り回されるのです。例えば、化粧品x車の会社であればどうでしょうか?このような組み合わせであれば確かに新しいビジネス(市場機会)は出てきます。

ダイバーシティ・スカンクワークス・副業・どんな形でもいいので、自分の主軸とは軸が異なる人と話す(場合により組む)必要があります。

ゼロイチの能力の問題

残念ながら会社内で「ゼロイチ」というのことはできません。いいとこ「1→10」ですね。会社の業態があり、給料があり、名刺があるのです。文化もあります。全てない状態から立ち上げるのがゼロイチです。この能力は、納豆を世界で始めて食べる人と、既に日本に納豆があってそれを海外に売るような差があります。

私も会社内で散々新規事業(今思えば持続型の新規事業)をやってきましたが、スタートアップに来て思ったのは全てが異なるということです。

ものすごい「カオス」を過ごさねばなりません。ベンチャー留学などでできればこの経験をした方がベターです。私も一回、スタートアップにジョインしてます。そこで「Unlearning」が必要です。

会社内の今までの経験が間違っているのではないのです。ゼロイチのスタートアップとは違うのです。

欧米ではスタートアップに学ぶということが主流化しておりますが、まさにこれでしょう。破壊型イノベーションは欧米の大手企業はそれが得意なスタートアップから学んでいるのです。

場所も評価基準も変える

イノベーションのジレンマで出てくる話です。既存企業が破壊型イノベーションを興せない理由は既に「上手くいっている既存事業を持っているから」です。その価値観・プロセスでは破壊型イノベーションは興せません。よくあるのが、大きな会社では最低でも100億ぐらい、あるいは1000億ぐらいないとNGだという話です。

持続的新規事業は問題ないです。例えば、この製品をタイで売ったらいくら、だから、文化の似ているこの国では幾らの売上がといえます。破壊型イノベーションの市場規模がわかるはずもなく(何故ならまだ無いんですから)この時点で難しいです。

常識を疑い、権威を疑い、常に学び続ける破壊型イノベーションは既存の価値感や新規事業の承認ステップでは「必ず」弾かれます。

このためには、教科書(イノベーションのジレンマ)に従って小さな成功でも喜べる「小組織」で、かつ、場所も変える必要があります。

なによりも、それができる環境が必要です。人事制度、あるいは、子会社化、スピンオフ(かつコントロールしない)の出口がないと不可能に近いです。「既存事業をやりながら新規事業も一緒」にという話は本当に良くあるんですが、これでは兵糧も持たせずに露頭に迷わせてしまいます(スタートアップで学んだこと「集中」と「積上げの効果」)。

外部リソースを活用できるか

新しい事業を行うのに、既存の人材では「本来は」厳しいはずです。能力の問題もありますが、大きいのは、人間はものすごく過去の経験や現状の業務に考え方が引っ張られるからです。この場合、コミュニケーションの良さはあるので、創業チーム(コアメンバー)としてはOKかも知れませんが、その後の人材として社内の人間が適しているとは言い難い部分があります。ここで、その新しい市場・新しいサービスに対して人材を外部から調達できるか?という問題があります。ここにフレキシビリティーさが無いと厳しい。単純に考えると、プロのサッカーの選手がいます。では、プロ野球で闘う上で、身体能力は高いかも知れませんが、昔のチームをつれては勝てないでしょう。こういうイメージです。

いずれにしろ、「素晴らしいでは足りない」ということと、あくまで新規事業を評価するのは「上司や会社」ではなく「市場」であることだと思います。

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