01Blog / 組織としてイノベーションを分業・協創する時代

2017.04.15

組織としてイノベーションを分業する時代

OECD事務総長が語った日本の課題は「生産性」「財政」「起業」…」の通り、日本の一つの課題は起業の少なさです。「「イノベーションのジレンマ」の大誤解~なぜ既存企業からは新規事業が生まれないのか」にまとめた通り、様々な「誤解」により日本はイノベーションが停滞しています。先日、我々のチームメンバーが西海岸の大企業で調査したところ、持続型のイノベーションは自社でやるが、破壊型(逸脱型)のイノベーションは外部かスタートアップに任せて、その連携・買収を通じて自社事業を発展させることが「評価」になる形です。

多くの日本の大手企業は自社内での「破壊型・逸脱型」イノベーションをする方向性は残念ながら当面変わらないでしょう。一方で、一部の進んだ企業では西海岸の大手のような動きは観測されるのも事実です。また、我々の運営するアクセラレータへの応募者に一部上場企業出身者が相当数含まれている(半分以上)のも事実です。例外はあるかも知れませんが、この流れ自体は進むでしょう。

個人が「できない人」ではなく、組織の強みが活きない

人材のプロとお話すると、評価制度なのか、人材の部分なのか、日本の企業組織には今は大きな問題があり、「私にはできない」「私には分からない」ということができずに「言い訳」に走るケースが極めて多いようです。これは本来は「トランザクティブ・メモリー」、つまり、誰もが全ての事柄の専門家になるのは不可能なので、このテーマはあの人に、この分野は彼に、という「知見者のインデックス」を知っている方が、自分が各事柄に精通していることよりも重要というものですね。組織論の話をここで深める実力もありませんので、これぐらいにしますと、つまり、破壊的(逸脱的)イノベーションは小組織に、持続型イノベーションは大組織にという考え方が必要ですね。また、イノベーションとはそもそもが「チーム」で行うものです「"真のチーム”がないから、日本は勝てない」。個人ができないのではなく、組織がイノベーションに向かないということをまずは認識する必要があると。

だったら、どうするか?ですよね。起業でもスピンアウトでも、やり易い方法でやらなければ社内の納得感があったとしても自由競争には勝てない。

誰もがイノベーションに向くわけではない

これも、日本の特徴のようですが、誰もがイノベーションをできないとならないわけではないと思います。例えば、大きな巨大事業を創れる人はプロ野球の選手のようなものでしょう。少なくとも一般の世界で全員をプロ野球の選手にしようという事は考えないでしょう。一方で、大組織の社内を考えると、ある程度は人にイノベーションは帰属する事は理解しつつ「それが苦手な人にも」やるように教育したり、配属したりすることでしょうか。

極端に自前主義か完全人任せか

これは、もしかしたら「本質的に何が目的か?という当たり前のこと」を深掘り・徹底しないからかも知れませんが、「なんでも自分でやりたがる」あるいは「完全に丸ぶりする」のどちらかが多い気がするのです。例えば、行政の人に急激に成長するスタートアップ支援をさせるのは無理がある(最も組織文化が遠い)。しかし、全部自分でやろうとするか、予算があるので、完全に丸ぶりするか(振る内容が烈しいとか)です。会社も同じで、自前主義という言葉もありますが、様々な人から話を聞くに、完全丸ぶり主義の場合も多いのです。その中間がない。

上記の「"真のチーム”がないから、日本は勝てない」であるように、主従・下請け関係ではイノベーションは起きません。「協創」と「真のチーム」が必要なのです。

組織としてイノベーションを協創する時代

日本よりも「失敗に寛容」ですが、決してスタートアップの地位が米国の西海岸で高いわけではありませんし、全員が起業しているわけでもありません。あくまで、マイノリティです。正確ではないですが、多分、日本のいわゆるいいところに勤めている人の地位が100で、起業家の地位の感覚が10だったら、西海岸は100と30-40ぐらいのものではないでしょうか(大手から見た感覚)。しかし、破壊型・逸脱型イノベーションは小組織で実施することに合理性があり、それを自社に実装することが大手企業のマネージャーの評価に関わるのであれば、非常に生活コストの高い西海岸では、会社員は同じようにローンを抱えて必死でしょうし、「相手から学ぼう」「相手と上手くやるには?」というインセンティブが強く働くでしょう。今の日本でそこまでのことが必要ないのは、そこまでのイノベーションを求める動機が働きづらいのでしょう(内部留保の大きさや四半期決算、経営陣の短い交代など)。この状況が変わるのがいつかは分かりませんが、少なくとも下記なしには日本の未来は開けないでしょう。

組織としてイノベーションを分化し、協創する時代が日本にも来ることを祈ります

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