生死を分けたクラウドファンディング

投稿者:Tsuji Kouji
2017/09/14 12:00


こちらは3/4記事目になります。

:クラウドファンディングについてお伺いしたいのですが、あの時の社内の動きや雰囲気はどんな感じでしたか?

高瀬:去年の7月にやったんですけど、本当はクラウドファンディング=資金調達で、そこで調達したお金でつくっていけばいいと考えていました。

もっというと、本当はKickstarterとかで半年以上前にやる予定だったんですよね。ただ色々話を聞いていくと、準備が結構必要で。プロトタイプもある程度つくっておかないと始められないし、メディアとかも繋がっておかないと流行らないというか。色々聞くうちに時間が掛かってしまいました。その時たまたまMakuakeの方から声をかけていただきました。

:向こうからだったんですね。

高瀬:そうですね、向こうから声を掛けていただきました。本当はもっと考えて、何台だったら開発と製造にこれだけ掛かるとかやらなければいけなかったのですが。今はたまたま2千台にいったので、受けてくれる工場がありましたけど、50台売れましたのレベルでは受けてくれなかったと思うので。そうしたらどうやってつくっていたんだろうと思います笑。

そういうことも当時はわからなかったですし、ハードウェアでスタートアップやったという人が、身近にいなかったんですよね。今は結構繋がっているんですけど、その時はそんなに繋がっていなくて、それにハードウェアのスタートアップは皆忙しいですし。

そんな感じでやり始めて、目標金額は100万円で、販売価格は一個2万円にしました。50台だったら周りの人に必死にお願いすればなんとかいけるんじゃないかという観点で。

こっちも面白いものをつくっているとはいえ、正直どうなるか分かりませんでした。時には、もし上手くいったら1,000万円位いけるんじゃないか?と夢も語りつつも、自分たち自身で疑心暗鬼な状態でしたね。自信は全くありませんでした。おかげで事前に沢山準備をすることになり、それが良かったとも言えます。

実際に始めてみたら、一気に色んなメディアが紹介してくれて、すごく話題になって、フタを開けてみたら2,600万円。MakuakeIndiegogo合わせて3,000万円位になりました。

本人たちもびっくりです笑。ウィンクで写真撮るとか、見たままを写真に収めるとか、コンセプト自体が評価されて、本当に多くの人にある課題感だったんだなというのが分かりました。

:ページを見るとコンセプトがすごくわかりやすいですよね。

高瀬:そうですね。PVベースだともっとすごくて、1,000PVいきました。ただコンバージョンに結びつくところがすごく低くて。キャッチだから話題性はあるんですけど、じゃあ実際に購入まで至るかというと、「あれ、これって何のために買うんだろう」や「これって本当に実現できるの?」などで躊躇された方が沢山いるんだと思います。

クラウドファンディングのハードウェア系は、特にKickstarterとかでも怪しいのがいっぱい出てきて、その度にポシャっているという、かなり逆風の中やりました笑。

最近はクラウドファンディングの流れが変わっていると思います。マス向けのプラットフォームになり、面白いワクワクするものは少なくなり、確実性の高い製品やバックボーンがしっかりしてる企業・団体のPRの一環になってきています。

今後は、そのPR効果もどこまで続くのか怪しいと思います。実際にクラウドファンディングをやるより、自社サイトで募集したり、ICOしたりという流れが最近はあります。従って、クラウドファンディングやりたい方は早めにやったほうがいいと思います。


一転して変わった社内の雰囲気

:実際にクラウドファンディングの金額が出た後、社内の動きはどのように変わっていきましたか?

高瀬:クラウドファンディングを始めるまでで一年位。試作づくりばかりやっていたんですけど、出来る予定なのに全然出来上がらなくて、もう本気でやっていくかどうかの賭けでした。資金調達という面だけでなく、自分たちがやろうとしていることは本当に市場ニーズがあるのか。無いんだったら会社もスタートアップと言えないしというのもあって。。

実際に出してみると、色んなメディアがガンガン紹介してくれました。自分たちがこれまでなんとなくやっていたものが、色んなところで紹介され、世の中から評価されたので、ちょっとムードが変わりました。

これは、本気でやらなきゃまずいという感じですかね笑。もちろん初めから本気でやるつもりでしたが、さらにムードが変わりました。

入ってくるお金を元手に、試作を整えなければいけないし、受託してくれる工場を探して契約しないといけなかったのですが、どれくらい掛かるかも、今考えるとちゃんと分かってなかったです。当時は当時の計画で立てていて、(2016年の)夏頃にやり始めて、年末にはいけるだろうと思っていました。

亀岡:結果いつくらいになったのですか?

高瀬:(2017年の)6月頃です。

亀岡:想定より半年くらい遅かったんですね。

高瀬:そうですね。たくさんの方にお待ちいただき、ご迷惑お掛けしました。もちろん約束は約束なので、守れなかったことに関して申し訳なく思っています。特にMakuakeは契約上、売買契約になります。Kickstarterのような支援に対するRewardではないです。この辺りはトリッキーですね。

:そうですよね。

高瀬:今まではピッチとかで会った人を呼んで、ボランティアベースで無給でやっていただいてという状況でしたけど、一気に仕上げなければいけないので、お金を払って業務委託でドンドン人を入れたのですが、それでもまずい状況でした。

期間・工数がこれくらい掛かってと、計画すれば分かるようなことだと今だったら思いますが、うちはセンサーを1からつくっているので、それが一番大変でした。


ハードウェア·スタートアップのやり方

高瀬:もし大手に依頼したらどれくらいか見積もったところ、研究開発で新機種をつくるのに8,000万円位、別途生産費で1億円を平気で超えていました。クラウドファンディングでいくら集めたって、一部にしかならないというか。

今考えたら、お届けまでに1年掛かります。お金は7,000万円をどこから集めようかという感じです。実績なんかないし、企業価値も上がらないし、夢だけ語っている30半ばのおじさんに誰が金だすんだっていう笑。

大成功したシリアルアントレプレナーの2回目、3回目だったら、「おぉいいじゃん!」「こいつが言うんだったら」と言われると思いますが。大企業辞めて血迷っている、カメラもつくったことがないやつに誰が金払うんだっていうのは、今考えたら思います笑。

だから理論的に考えたらお金を出さないですよね。

キラキラしているスタートアップ創業者は、例えば海外の大学のPh.D.とか、有名校・大学院でずっと研究をしていて、その技術を使って起業し、スタートアップのコンペで優勝して、どこどこからシードでこれだけ入れていう方が多いですよね。

そう考えたら奇跡的ですよね。予算立てはしないといけないですけど、知らないから突っ込んで、どんどんバーンアウトだけが広がって、資金繰りどうするのみたいな状態で。別にCFOが付いてくれる訳でもないですし、自分で財務会計もやらないといけない。

日々、色んな人に会って、紹介してもらって、中にはご縁があってみたいな方から出資いただいて、という感じです。今月は、来月は、その次は、とギリギリセーフの状態もありました。結構そういうスタートアップは多いと思います。表立っては言いませんが。

いつになったら落ち着くのかな?と考えます。特にハードウェアは、ゆっくり台数を増やして時間をかけて売っても仕方ないので、脈のあるうちにスタートアップのやり方で一気に売っていったほうが良い。

時代が流れると、ライバルもいっぱい出てきます。早めに大きく調達して、ダイリューション覚悟で身を捧げて、一気に製品を売り、話題をつくって、ユーザを増やして、写真のレビューを増やしてというのをやっていったほうがいい。

そのためには、企業価値はそこまで上がらなくても、沢山資金を入れて「ガンガン行くぞ!」という感じにしないといけないなと思っています。シリーズAで億単位で出してくれるVCは存在していますが、今はそこに至るのにまだ足りない。

流行りそうな状況がハッキリ分かればいいんですけど、初期のスタートアップは実績はほとんどないので。だから上手く進んでいるスタートアップの定番は、「セキュリティが弱いです。」「これ位の人が亡くなっています。」などの分かりやすい課題です。

ウインクで撮れますと言っても、「確かにあったらいいなー」「あったら面白いけどなくてもいい」となる。そうなると、結局ユーザがどれだけ使ってくれているかという実績しかない。

あるいは特定の法人用途で、ハンズフリーの作業記録などに耐えうるスペックを叶えていくという、明らかな課題やニーズを見極めていく必要があります。


課題があるけど、誰も気づいていない

:マイナスからゼロの課題は分かりやすいですよね。一方、日本はモノが溢れている便利な国なので、マイナスからゼロの解決手段は大体揃っている。これからの創造者は、ゼロからプラスαのプロダクトを創造しなければいけない。

プラスαのビジョン設定型課題の領域は、一見課題がわかりにくいので、実績がないと理解してもらえないことがありますよね。スタートアップ界隈でよく言う、誰も信じない気づいていないものなので。

高瀬:課題があるけど、誰も気づいていない。「写真はiPhoneで撮れるし」と。実は、iPhoneはょっと不便なんだけどなというのは、潜在ニーズなので気づかないんですよね。皆当たり前なこととして使っている。手を出すのが面倒くさいな~とか、いちいちそんなことは意識しないんですよね。

:日常で当たり前になっていることは、課題を課題として認識していないですよね。そこの仮説を立てた場合は、仮説検証から得られた実数値があると投資をしてくださるので、そこを積み重ねていくしかないですよね。

高瀬:人間わりと不便でも当たり前だと思っていたら、不便さも別に享受するというか。江戸時代はテレビがなかったけど、生きていたし、電車とかなくても生きていた。まぁ今電車がなくなったら困りますけど笑。

写真も、こうやって(手に持って)撮るのは不便じゃん!結局キメ顔でしか取れていないじゃん!と感じる人は少ないですが、自分はそこの課題に気づいてしまって。そこから、親が子どもの自然な写真を撮れたと楽しんでくれて、アルバムが出来て、いつもと違う表情が残っていったら素敵だなと思いました。

実際に親御さんに使ってもらいインタビューをすると、ママの撮影技術が高くないことに気づきます。プロは、自然な笑顔を引き出したり、構図を考えて撮影できますが、ママはスマホの画面真ん中で「パシャ」と撮るだけです。

そして子どもは常に同じポーズで写っています。プロはそうじゃないのも撮れるんですけど、ママさんは難しい。

使ってもらうと、公園をバックに走っている姿は絶対に撮らないからすごく楽しいです、などの反応をいただき、ニーズが少しずつ分かってきました。

こちらは3/4記事目になります。

「瞬きで撮影できるカメラを創る、イノベーター高瀬CEOの素顔」1/4記事
「人生を賭けた、無一文からのスタートアップ」2/4記事

「世の中に新しい価値を届ける」4/4記事

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投稿者
Tsuji Kouji
株式会社ゼロワンブースター

IT代理店にてNTT・KDDIの企画営業、Yahoo!ショッピング出店舗へのマーケティング業務。住まい・結婚などライフスタイル領域の新規事業開発、テレビ局・飲料メーカー・ゲーム会社などのPR・コンテンツ開発に携わる。2011年に独立し、企業の人材育成・新規事業立上げ支援、Web・アプリプラットフォーム事業設計、エンジニア育成アカデミー運営。2012年に孫泰蔵氏の第2期 SeedAccelerationProgram MOVIDA Scholarship に選出。オールアバウトにて新規事業立上げに従事。2017年01boosterに参画。
【専門分野】新規事業創造、経営戦略、Webプロモーション・プラットフォーム設計、UIUX、マーケティング

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