「鉄道会社は、イノベーションのハブになる存在」担当者が語る、KEIKYUアクセラレーターへの想い(前編)

投稿者:Tsuji Koji
2017/12/28 00:00

 

ゲスト
橋本 雄太Yuta Hashimoto
京浜急行電鉄株式会社 新規事業企画室 主査。大学卒業後、大手新聞社に入社。主に管理部門で,組織人事領域の業務に携わる。その後、外資系コンサルティングファームを経て、京急電鉄に中途採用で入社。新規事業企画室にて新規事業の立ち上げを担当し、「KEIKYUアクセラレーター」の企画・運営を含む、同社のオープンイノベーションを推進している。
インタビュアー
 孝次Koji Tsuji
IT代理店にてNTTKDDIの企画営業業務、Yahoo!ショッピング出店舗へのマーケティング業務。住まい・結婚などライフスタイル関連の新規事業企画、テレビ局・飲料メーカー・ゲームなどのPR・コンテンツ企画開発、ネットコンサルティングに携わる。2011年に独立し、新規事業立上げ支援、プロダクトのUIUX設計、エンジニア育成アカデミー運営、企業の人材育成。2012年に孫泰蔵氏の第2 SeedAccelerationProgram MOVIDA Scholarship に選出、女性向けショッピングSNS事業創造。オールアバウトにて新規事業立上げ、プロデュースに従事。2017年に01booster参画。


橋本雄太氏(以下 橋本) こういったインタビューは、人生初めてです(笑)。

辻孝次(以下 辻) それは光栄です。今回は京急さんが今後どのような世界を実現しようとしているのか。また、一緒に取り組ませていただいているアクセラレータープログラムについてお聞きできればと思います。まずは、所属している新規事業企画室について教えていただけますか。

橋本 当社および京急グループ全般に係る、新規事業の立案と調整を担っています。具体的には統合型リゾートの参入検討、羽田1ゾーンの再開発など、いくつかチームがあるのですが、我々新規事業担当はゼロベースで新規事業の発掘、立ち上げをミッションにしています。

自分たちで01を作っていくのも重要ですが、今のタイミングは、京急がハブとなって大企業やベンチャー企業など、これまで接点の少なかった様々なプレーヤーを巻き込んでいこう。オープンイノベーション活動をきちんとやっていこう。という形で動いています。

個別の新規事業も当然検討しています。ただ、オープンイノベーションを推し進める1つの仕組みを創ったほうが、結果的に大きなことができるのではないか。という考えから、今回のアクセラレータープログラムを実施するに至りました。


アクセラレーターをやるにはビジョンが必要

 実施を決めた当初、アクセラレーターを色々想像していたと思いますが、今実際に動き始めてみて、当初想定していたものと何かイメージと違う点はありますか。

橋本 まだ取り組みも途中なので、分からない点も多いですが、予想以上に世の中の反響が大きかったことが、やってみてわかったことです。どちらかというと我々は後発なので、どれくらい存在感を出せるのかは、正直心配していました。

ところがいざやってみると、イベントの反響であったり、当初想定していたよりも、我々のプレゼンスを高められたので、そこは良かったと思っています。

一方、アクセラレータープログラムはまだ答えの無い世界で、本当の成功事例というのは、まだ世の中に確立されていないですよね。だからこそ、企業側のビジョンが無いと難しい活動だと感じています。我々が何を目指していくのか、それを決めて進めることにより継続性が生まれると思います。

 コーポレートアクセラレーターは、企業ごとに方向性や課題が違うため、それぞれ特色が違いますね。鉄道業界は、他のプレーヤーもオープンイノベーションを実施されていますが、京急さんが感じる、鉄道業界ならではの特色はありますか。

橋本 鉄道業界の場合、こうした活動に火をつけてくれたのは東急電鉄さんだと思います。東急さんは3年ほど前から取り組まれていますが、鉄道会社のオープンイノベーションの型みたいなものを創ってくれたおかげで、他の鉄道会社もそのモデルを参考にしながら、自分たちのやり方を模索している感じだと思います。

東急さんは、渋谷というイノベーションの拠点があり、そこを地盤に展開されているため、我々とは背景が異なりますが、非常に良い教科書になっています。東急さんだけでなく、鉄道会社は横の繋がりがあるため、それぞれ情報交換をしながら仕事をしていますね。

 連絡を密に取り合っていらっしゃるのですか。

橋本 そうですね。鉄道業界は、基本的に事業エリアが被らないので、競合にはならないんですよ。同じようなビジネスをやっていますが、実は皆さん違うエリアで仕事をしているので、協力し合える部分はあります。

 一部交わる場所はあれど、確かにほとんど被ってないですね。逆に悩みが一緒で、共感事が沢山ありそうですね。


プラットフォーマーとしての強み

 他に、アクセラレーターをやってみて分かったことはありますか。

橋本 アクセラレーターをやったことにより、普段お会いすることがないような、色んな企業の方との繋がりが生まれました。あまり鉄道とは関係のない業界の方から、「ちょっと意見交換しませんか」というお声がけをいただいたので、これもわかりやすい反響ですね。

 それはアクセラレーターならではの反響ですね。世の中から見たとき、地盤を抑えている鉄道業界は強みが分かりやすいため、コラボイメージを抱きやすいのかもしれませんね。

橋本 確かにそうですね。オープンイノベーションは、ひと昔前だと所謂テック系の技術をお持ちの企業が、新しい技術を取り込むためにやっていたと思いますが、今はプラットフォーマーが多くなっていますよね。不動産ディベロッパーさんとか。

 スタートアップ側が持っていない強みを、プラットフォーマーの皆さんは持たれていますからね。

橋本 そうですよね。一方で、事業領域が幅広いため、何でもはまってしまうという部分が、鉄道会社には結構あります。そこで、何を目標にするのかは、ある程度決めておいたほうがいいですね。メーカーさんみたいに、新しい技術を取り込みたいなどの目標は、とても分かりやすいと思います。プラットフォーマーとして、何を提供するのか、あるいはその目的ですよね。その辺りをきちんと定義しないと、難しくなると感じています。


次の120年をつくるための事業創造

 今あった目的や、何を提供するかというところは、現時点ではどんなイメージを持たれていますか。

橋本 当社は20182月にちょうど創業120年を迎えるので、次の120年、繁栄していくために新しい事業を創るというのが1番の目標ですね。

一方、アクセラレーターで一足飛びに100億円の事業が生まれるとは思っていないので、このプログラムを含むオープンイノベーションの活動を地道に行っていくことにより、会社の雰囲気が変わってきたり、社員の目線が少しずつ上がっていくなど、そういったところが非常に大きな効果として現れてくると思っています。

組織創りは、事業創造する上でとても大事な要素なので、そういった意味では、今後の120年を創る上での1つのステップとして、このプログラムは役割を担っていると思います。

 実際、プログラムをスタートしてから、社内の雰囲気はいかがですか。やる前と後では、何か変化はありますか。

橋本 はい、良い反応を感じています。そこは正直意外だったのですが、こういう活動に対して前向きな人間がとても多いです。

先日、若手の社員に集まってもらいワークショップをやったのですが、非常に盛り上がり、それぞれが京急や沿線の未来を真剣に考え、熱い思いを持っていることが分かりました。「面白そうだね」と積極的に参加してくれる社員が、上の世代も含めて沢山いたので、担当者としても嬉しかったですね。

 社内の方々は、スタートアップのことをどのような視点で見られていますか。アクセラレーターを実施された某企業では、「スタートアップや起業家と交流することが無いため、最初接し方が分からなかった」という感想がありました。京急さんの場合、スタートアップとのコミュニケーションは、皆さん慣れていらっしゃいますか。

橋本 実は、今までスタートアップと組んだ実績もあり、個別の案件としてはやっています。一方、それは担当者による部分も正直あったので、やはり会社全体としては起業家との接し方は慣れていないと思います。

一元化された窓口としての機能もこのプログラムにはありますので、会社としての目利き力やノウハウも、これから蓄積されていきます。スタートアップの方々から見ても、どこに話しに行けば良いのか明確になったと思うので、そこはお互いにとって非常にやりやすくなったのではないでしょうか。


人口減少の中で、いかに沿線地域の生産性を高めていくか

 今回のアクセラレーターでは、どのような企業に応募して欲しいですか。

橋本 我々はプラットフォーマーなので、比較的ジャンルを問わず、お付き合いできると考えています。京急電鉄は、東京・神奈川エリアの都市生活全般に携わっており、交通事業だけでなく、百貨店やスーパーマーケットなどの流通事業、オフィスや住宅の賃貸などの不動産事業などの様々な事業を展開しています。さらには、ホテル、マリーナ、水族館などのレジャー施設の運営、ハウスクリーニングのようなサービス事業や、保育園などもグループ内にあります。

従って、我々の沿線に住んでいる方々のライフスタイルが変革していくような、心地よい生活基盤を生み出すような、そういったプロダクト、サービスをお持ちの方々に、ぜひご応募いただけると嬉しいですね。

日本はこれから人口が減っていくため、我々の沿線も他人事ではない状況です。三浦半島の辺りのデータをみると、すでに人口が減り始めています。人口が減るというのは、鉄道会社にとって非常にクリティカルな問題です。

処方箋は二つあって、一つは人口を増やすことですが、簡単にはいきません。もう一つは沿線地域での生産性をいかに高めていくか、です。この部分を鉄道会社も真剣に考えていかなければいけないと思います。

 きっと他の鉄道会社さんも同じような状況ですよね。

橋本 同じだと思います。鉄道会社は、基本ビジネスモデルが一緒なので、今の状況での打ち手は似通ってくると思いますね。

 

こちらは1/2記事目になります。


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投稿者
Tsuji Koji
01Booster

IT代理店にてNTT・KDDIの企画営業、Yahoo!ショッピング出店舗へのマーケティング業務。住まい・結婚などライフスタイル領域の新規事業開発、テレビ局・飲料メーカー・ゲーム会社などのPR・コンテンツ開発に携わる。2011年に独立し、企業の人材育成・新規事業立上げ支援、Web・アプリプラットフォーム事業設計、エンジニア育成アカデミー運営。2012年に孫泰蔵氏の第2期 SeedAccelerationProgram MOVIDA Scholarship に選出。オールアバウトにて新規事業立上げに従事。2017年01boosterに参画。
【専門分野】新規事業創造、経営戦略、Webプロモーション・プラットフォーム設計、UIUX、マーケティング

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