スタートアップする時は、まずメガトレンドを見るべし

2018.03.14

こちらは3/5記事目になります。
「現在の延長線上にはない未来を考える」加藤順彦氏が語る、事業創造0→1とは vol.1
社内を活性化したければ、別領域のスタートアップを買収せよ vol.2

スタートアップする時は、まずメガトレンドを見るべし vol.3
国内のスタートアップ環境は、過去50年で最高 vol.4

後悔しない、人生の岐路に立ったときの考え方 vol.5


加藤 僕は、スタートアップにしてこうすれば、ああすればという時に、「まずメガトレンドを見ろ」と言っているわけですよ。どこが大きくなるのかを見ろと。大きな流れを見極めた上で、自分たちがどこに軸足を置くかを考えなさいってやっています。

 

   スタートアップは、若さとガッツと貯め銭1000万円から、そういった領域にチャレンジするわけですよね。かたや何でそこに、おカネも信用もある会社が何故やらないのか。「祖業と関係がないから」と言うけれども、本当にそうかなといつも思っています。

 

  チャレンジしない口実になってしまっているんですね。

 

加藤 うん。だからアクセラレータープログラムって文脈では、いつもこんなことを考えていました。

 

  まさに加藤さんがシンガポールに行かれたのも、そういったことですよね。

     

加藤 そうそう。だって2008年、移住当初の僕にとって、シンガポールはほぼ関係ない場所ですからね。移住した理由は単純で、「これからはアジアがイケてる」それだけでした。シンガポールに行くときに1個だけ決めたことは、「広告や表現の仕事をメインにするのは辞めよう」ということでした。

 

   なぜかっていうと、シンガポールで広告屋やっても勝ち目無いんですよ。それまで表参道で16年間広告の商売をやっていて、一番得意な仕事もそれでしたが。

 

       シンガポールに入って約10年ですけど、広告や表現の仕事は一部を除いて大半は辞めました。得意なこと、好きなこと、できることを軸に考えるのは1番楽なやり方なんですけど、その時はあえてリセットしてみた。シンガポールに行くと決めた段階で、それまでの自分の食い扶持は、一度封印しようと決めた。それ結構自分の中では大きかったかな。

 

得意分野さえも断ち切る覚悟で、未来に投資する

 

  シンガポールでは勝てないってお話もありましたけど、加藤さんはなぜ軸を変えることが出来たんですか。変えると言って、何だかんだ変えられない人が大半だと思います。

 

加藤 まず言葉の問題は大きいですよね。自分は英語がそんなに得意じゃなかったので。

 

       広告はやっぱり表現の仕事だって、自分が誰よりも分かっている中で、それが上手くできない状態では中途半端なことできない。異邦人としてシンガポールに行く中で、自分がシンガポールの人の心を打つような表現ができるのかというと、できないなと。広告人としては日本を一歩出たら、もう飯は食えなくなる。

 

   それこそ、シンガポールにいる日本人の公認会計士弁護士の人も言ってますけど、自分たちの仕事というのは、あくまでも国の資格の上で成り立っていると。

 

   僕は、資格制度に則って広告屋をやっていたわけじゃないですけど、もうシンガポールに行くと決めた段階で、広告をメインでやるべきじゃないと判断しました。だから軸を変えられたのかもしれないですね。

 

 

  なかなか変えることができない場合は、環境を作ることが先決ですね。

 

加藤 広告会社NIKKOれたのが20086月で、辞める時に3つの選択肢がありました。

 

   1つはGMO NIKKOに、GMOに就職することです。親会社になって頂いたGMOグループはずっと取引先で、みんな仲良しですからね。残ってグループの別の会社の社長とか、そういうのもあったかと思います。

 

   GMOへの就職ではなく、ネット広告の仕事と直接関係のない、例えば制作の会社とかを起業するとか。それでも、僕がもし東京に残って仕事すると、GMO NIKKOとお客の取り合いが起こる可能性がありました。

 

   加藤さんが東京で開業するなら、NIKKOらずについていきたいといういて。それも結局、GMOグループに僕が置いてきた経営陣と半目になっちゃうかもしれなかった。

 

   それは本意じゃないんですよ。だから似たような業態就職することも、起業することもありえないと。

 

   じゃあ東京以外の別の場所で、似たような商売、例えば僕の故郷の大阪とかね。なんか商売があるような気もしなかったですしね。

 

   また当時何かやりたいことがあったわけでもなかった。最後2年くらいはすので精一杯で、毎月資金が足りなかったんです。完全自転車操業だったことで、疲れ果てたこともあったと思うんですよね。もう手放すことが決まった段階で、正直かなりホッとしました。だから、また新しくゼロからやるか、みたいな気持ちに、ぐにはなれなかったんです。

 

   20087に、残りの選択肢だったシンガポールに行きましたけど、ぶっちゃけ半年くらいは何もしてないんです。その間にリーマンショックが起こって、余計に呆然としてました。

 

   1番の理由は、NIKKOでの後半7年ほどはずっと検索とモバイルの広告売ってたんですね。Google AdWordsとか、docomoauのモバイル広告。あとはYahoo!のブランドパネルを売りながら、頻繁にそれらの広告手法先進国であるアメリカに行っていました。そのアメリカで皆さん2006頃から「これからアジアだ」ってえて言ってたんです。しかももイケてるのは「シンガポールだ」と。

 

   たまたま僕は、2003年からシンガポールでコンタクトレンズの越境ECのスタートアップに投資していたんです。そこに、この後シンガポールが来るというのが分かっちゃった。この先、何やっていいかわかんない状況の中でシンガポール...ふーん、そうなんだ、と。で、面白いなと思って。

 

   でもアメリカの会社が中国進出して、皆んなすごく苦労していたんですよ。20042006年くらいですね。

 

シンガポール移住した、10年前の世界情勢

 

加藤  Facebookできない。AmazonGoogle弾かれるAppleもストア入れない。まぁまぁ入れているMicrosoftも、できる商売の内容は限られています。

 

   彼らは中国を諦めたり、距離かざるをなくなっているけど、やっぱアジアはこれから来ると言っている。中でもに東南アジア確実に来るぜ、と。

 

   そこで、そのGAFAやマイクロソフトが相次いで、揃って持株会社を置いたのがシンガポール。そろい踏みしたのが、僕がちょうど移った2008年なんですね。「あら、アメリカのIT Giantはみんなシンガポールを拠点にするんだな」と。

 

   中国には政治的な背景やアメリカのIT産業に対して懐疑的なこともあり行けない。一方、東南アジア各国は逆に無防備な状態。シンガポールにっては、政府からしてウェルカム状態。当面は無税とかね。サーバーは設置費用ゼロとか電気代全部負担とか。当時は、アメリカのIT Giantに対して優遇があったわけですよね。

 

   揃いも揃ってみんな東南アジアに出てくる、しかもシンガポールに出てくるというのをって、「これはキテるな」と。移住逡巡していた僕には重要な事実でした。

 

   出てきて3ヵ月でリーマンショックが起きました(20089月)。でもその後、世界的企業の価値が下がっていく中で、東南アジアでは、特にシンガポールがリカバリー早かったんですよ。日本はそのまま落ちっぱなしで、中国もしばらく落ちたのですが、シンガポールだけはリカバリーが早かった。

 

   周りの東南アジア各国も、半年くらいでもうリーマン前の経済指標に戻っちゃったんですよ。土地も株価も通貨も。そこで、僕は確信したんですね。「あ、東南アジアだけはホンモノだ」と。

 

   むしろリーマンショックが起こったことで、それまでの株高、通貨高、土地高、いわゆる世界トリプル高ですよね、それが上げ底だったとハッキリしたことが良かったです。何がインチキで何がオーガニックか、把握することができました。

 

   その後200910年と未曽有の円独歩高の時期というのがあって。日本でリーマンを乗り越えたイケてる会社が、強い円を背景に東南アジアへ一斉に出てきたわけですよ。

 

   2009年の段階で、この後少なくとも10年くらいは、東南アジアは熱いとじていました。実際、安倍政権が始まってから通貨のコントロールで、日本円は国策的に価値が下がってしまいましたけれども。その前の民主政権の円の強さに乗じて、海外に出てった企業押し並べて上手くいっていると思います。震災前の2010年、11年前半頃ですね。

 

  シンガポール、アジア近辺は、10年前に予想した通りの変化が起きていますか。

 

加藤 東南アジア各国はほぼ予想通り、GDP35%くらいの成長、これからも数年続きますね。一方、移住当初にじていたのと大きく違ったのは、中国が全く失速しなかったことと、インドの立ち上がりが相当早かったことです。

 

   いずれにせよ、日本企業は引き続急成長を続ける、アジア域内内需をお金に変えていかなきゃいけない、といます。


こちらは3/5記事目になります。
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