【01Blog】ユーザの声を聞いてはいけない!?

2014.08.06

私が大手メーカの家電部門の商品企画にいた頃、その時の上司から、「ユーザの声を聞いてはいけない」と言われたことがあります。もちろん、ユーザを無視するという意味ではなく、ユーザの言うことを聞いてもなかなか実際に売れるものとずれが出てくるということです。なぜならユーザが自分が欲しいものをそもそも知っていない場合の方が多いですから。 マーケティングの専門家の方にも言われたのも覚えています。「顧客ニーズ」を満たすのではなく(要は言うことをなんでも聞く、左右される)、「自分の立場から見た顧客ニーズを満たす」のだと。 多分、上記二つはかなり同じことを言っていると思われます。 例えば、デザイン系に関しては、多くのユーザの声を聞くよりも「誰か一人の意見」で創る方がぶれなくて良い物ができるとの声がありました。amadanaというデザイン家電のベンダーがおりますが、現在は分かりませんが、過去に社内の一人の人の意見で決めていると。色んな人の意見を聞いてあーでもない、こーでもないというとかなり商品の軸がぶれるんだと思います。 顧客インタビューに関しては、こちらに両記事があります。下記の3つを大切にするということですね。 [1] インタビューの目的 [2] 仮説を作る [3] 仮説を修正する 結局、やってみないと分からない。というところがどうしてもあるので、顧客インタビューの効用は?というのはあると思うんですが、仮説自体が大きく間違っていたとしても、インタビューをしておくと、あ?そういう意味だったのか?と後で腹落ちしてビジネスの方向修正の精度がかなりあがると思えるわけです。 また、私の個人的な考えとして、特に日本の場合は顧客の声が比較的そのサービスの成功の可否に効く気がします。海外を見ていると、そうでもない気もします。誰かを知っているとか、たまたまメディアに取り上げられたとか、ちょうど、その時誰か財閥の方のニーズと合っていたとか。色々な複合要素があると思うわけです。 後は、起業家または事業を推進する人の「飽くなき成功への熱望」。結局これもかなり大きい。 欧米的な考えですが、比較的積み上げ型の日本に比べて「世界を創る」というのもあります。Appleさんなんかですね。ドラッガーの名言も響きます。「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。未来を予測しようとすると罠にはまる。」 但し、ユーザインタビューや競合調査をあまりにもしていないケースが、逆に日本の場合非常に多いのも事実です。これは「穢れ」の精神が強いのか、比較的視野が狭いのも原因かとも思ってます。欧米系は確かに未来を創る形なんですが、市場調査や顧客インタビューもかなりしているというところでしょうか。 あまりよい言葉ではないかも知れませんが有名な言葉に「嘘も百回言えば真実になる!」というのもありまして、人の気持ちは変わりますし、必ずしも真実が正しいわけでもありません。言い続けて世界を創っていくのもある。言葉は不思議です。セルフプロパガンダの世界ですね。これは起業家にとってはある程度(時には非常に)必要。話はずれますが、詐欺と起業家はあまり変わらない。唯一違うのは、詐欺は言ったことに対して努力しない。一方、起業家は言ったこと(その時点では単なるホラだったとしても)に対して努力するということだと聞いたことが有ります。これも一理あり。 さて、話を戻しますと、どれが正しいかはなく、全ては「中庸」なのかも知れません。 多くの市場を見て、競合を観察。顧客インタビューも実施する。人と話す。自分のWillに偏っていないかをチェックしつつも、その中で自分なりの未来への確信を掴んで、未来自体を創っていく。 そんなプロセスが必要なのかも知れませんね。

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