01Blog / 新規事業開発のグレシャムの法則

2017.04.12

「悪貨は良貨を駆逐する」で有名なグレシャムの法則。

金や銀の含有率の低い悪貨のほうが含有率の高い良貨よりも先に流通するということを言っており、英国王室の財政顧問でもあったトーマス・グレシャムが16世紀に説いたものです。

さらに「計画のグレシャムの法則」はUSのノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンが唱えたもので、会社や組織は、重要で変革を伴うような活動よりも、目先のルーチンな活動が優先され、そのルーチンワークに満足してしまうという説です。

現在、01Boosterでは多くの大手企業の新規事業開発担当者とお話ししていく中で、このグレシャムの法則が顕著に表れていると感じています。事業を創造することは従来のルーチンではない、まったく新しい価値の創造であり、その活動のプロセスは『カオス』です。そして、多くの人にとってはこのカオスは苦痛になり、耐えられません。(起業家マインドをもった人にとっては時にこのカオスを楽しむことができます。)ゆえに多くの方が以下のような活動をされていると感じます。

【1】1発勝負で終わる

新規事業は適切に小さな失敗を繰り返し、市場に問いながらサービスやプロダクトを磨き上げていくプロセスが必要です。ある意味このプロセス自体がカオスであり、このカオスが耐えられないため、失敗を繰り返せず1発目のサービスに失敗するとそこで諦めてしまいます。裏を返せば、失敗しないようにしようという意識が強いため、市場調査を机上でやり尽くし、結局実行しない、トライ&エラーを繰り返せなくなっています。

【2】資料作りを始める

上司や組織に対してアピールするために目に見えるアウトプットを出すことに焦り、市場や顧客との対話よりも、机上で説明資料作りばかりしてしまいます。実は優秀な起業家の行動特性に精緻な計画を作らないというものがあり、それだけ市場との対話や未来の予測(創造)を大切にしているのだと思います。どうせ変更する事業計画等を精緻につくる必要などないと。

【3】イベントを開催する

イベントを企画し、実施することで事業創造活動をしている感じに浸る。特に最近多いのですが、アイディアソンやハッカソン、マッチングイベント等は新規事業活動として実施されるケースが多いのですが、ここから新規事業が生まれたという話しはほとんど聞きません(日本においては)。アィディアソンやハッカソンが意味がないと言っている訳ではなく、このようなイベントを実施することで満足してしまうことに問題があります。アイディアソン・ハッカソンは事業創造の目的ではなく、1つのプロセス・方法論に過ぎません。

【4】メディアに露出する

事業創造がアウトプットではなく、活動のプロセスをメディアを通じ発表します。これも【3】同様ですが、メディアの発表と事業創造は別物です。当然、事業創造は上手くメディアを活用するべきですが、それは経済実態を生み出せる可能性がある本来の事業創造活動があるからこそ活きてきます。


新規事業開発活動も、従来からの本業のルーチン活動の延長線上でやってしまうケースが多いようです。そして、ここが一番重要なのですが、ほとんど『無意識に』やっているということです。本人は「事業開発している」と思い込んでいるのですが、現在多くの会社で本業のオペレーションに最適化された組織になっているため、新規事業の経験が少なく、試行錯誤されているのだと思います。

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