01Blog / コーポレートアクセラレーターは初期の役割を終え、次のモデルへ

2017.09.30

弊社01Boosterでは、大手企業が主催するコーポレートアクセラレーターを以下のように定義づけ、拙著「コーポレートアクセラレーター」でも明示しております。

流行りものの経営ツールは、多くの場合、各社の都合で曲解され、そして早い段階で陳腐化します。そして、コーポレートアクセラレーターは、すでに陳腐化が始まっています。これはもう止められないと思います。本来、ツールは道具であり、手段に過ぎませんので、本質的な意義をおさえておく必要があります。(僭越ですが、)コーポレートアクセラレーターのパイオニアといわれる弊社として、その意義と曲解パターンを整理しておこうと思います。

〔1〕本体から切り離した「出島」環境で、

新規事業は従来の価値基準や意思決定プロセス下では創造されません。自己否定や既存事業とのコンフリクトが生れるからです。ゆえに本流の価値基準や意思決定プロセスから遠ざけることが必要となります。アクセラレーターを主催しながら、本流の価値基準や意思決定プロセス、社内のしがらみにベンチャー企業を巻き込んでは意味がないのです。その調整弁が我々のようなプレイヤーとしてのアクセラレーターです。

〔2〕ベンチャー企業の新規性、実行力、覚悟を活用して、

新規事業を創造するために最も必要な資源は何でしょうか?「実行力」、さらには覚悟と執念をもった命がけの実行人材です。さて、そのような執念や覚悟を持った人材を既存企業社内で誕生させ、育成し、温存することが難易度が高いのです。これは個人の能力を問うているのではなく、構造的な問題です。それゆえに、事業オーナーシップと事業成功の強い執念を持った社外のベンチャー企業を主体牽引者としているのです。

〔3〕マイノリテイ出資を通じて、失敗コストを制限して、

コーポレートアクセラレーターは「マッチング」ではありません。時に本業を否定し、事業部とコンフリクトを起こすようなものであっても、自社内で生み出せないような逸脱的イノベーションを創造するツールです。下請け企業を探すのであれば、日本の多くの大手企業がいままだ散々してきた「下請け企業とのマッチング会」をすればいいのです。それは「アクセラレータープログラム」ではないので、「ビジネスマッチング会」とでも言えばいいのです。社外に数多くの種を植えるためには、マイナー出資を数多くする必要があるのです。出資を前提としなければ、傾向的に「下請け探し」になってしまいます。

〔4〕参加ベンチャー企業を主体として、リスクを外部化し、

上記のベンチャー企業の覚悟や執念を引き出しのであればベンチャー企業を主役に据えなければなりません。一方主催企業としても、リスクの高いイノベーション創出は小さい種をできるだけ多くの蒔いておくことが有効であるため、主体者を社外にすることでリスクを隔離しながら、イノベーションの種を蒔けるのです。そのためにも、コーポレートアクセラレーターは、マイナーでもよいので出資をすることを『前提』とする必要があります。

〔5〕スピード感もって、

新規事業の検証サイクルは高速回転させる必要があります。今の大手企業ではこの高速回転が難しいのです。それゆえに社外のベンチャー企業のスピードでその検証をするのです。大手企業が乗り込んでいって、何でも管理しようとしたり、大手企業の遅いスピードに合わせていては、検証スピードは低下してします。

〔6〕数多くトライできる、

新規事業の成功確率は低いのです。よく「千に3つ」などと言いますが、それは言い過ぎだとしても、20件トライして、1件成功事業が生まれればいい方でしょう。それゆえに、数多くトライをする必要があります。コーポレートアクセラレーターでは平均10社程度を採択して実施されますが、それは数多く実施するためのものです。それゆえに、マッチングして、2、3社の事業連携案件を狙う、若干数の取り組みを求めるものではありません。それは下請け企業探しに他なりません。


結局、現在国内で行われる、多くの「大手企業主催のアクセラレーター」と称する活動が、従来の大手企業のパラダイムの中で行われる傾向にあるので、本来狙っている「自社内では創造できないような逸脱的イノベーション」の創出につながらないことになります。弊社がpoweredするアクセラレータープログラムでは以上のことを十分留意して実施しておりますが、(それゆえに、クライアント企業にも躊躇せずもの申しておりますが、)市場全体の流れはもう止められず、ツールとしての陳腐化は始まっています。もちろん、大手企業とベンチャー企業のオープンイノベーションの方法論としてアクセラレータープログラムを実施された大手企業にとっては多くの学びを得たことでしょう。それは大変意義深いプロセスであり、多くのアドバンテージを得たことでしょう。  

もう1度言いましょう。コーポレートアクセラレーターは単なるツールです。本当に事業創造に繋がることを本質的に取り組まなければ成果はでないのです。弊社は「コーポレートアクセラレーター」というブランドやツールに囚われない、すでに、新たな取り組み・ツールを複数社で並行して実施し、「日本を事業創造できる国」にするための試みを始めています。「コーポレートアクセラレーター」を出版して早々ですが...

・・・