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現役コミュニティマネージャ兼コワーキング支援SaaS起業家が語る、よいコミュニティとは|登壇者インタビュー(後編)

2021年6月24日に開催される、事業創造コミュニティカンファレンス「01 Community Conference」。注目のセッション「地方で創るスタートアップエコシステム」にモデレーターとして登壇予定の青木さんへお話をうかがいました。前後編の2回に分けてお届けする当インタビュー記事。前編の「大企業を辞めスタートアップを地方で起業する、逆張りキャリア|登壇者インタビュー(前編)」に引き続き、今回の後編では、よいコミュニティとは何かについて教えていただきました。

プロフィール

青木源太さん|株式会社funky jump
東北大学大学院農学研究科卒業後、2016年大手電機メーカーに入社。住建分野における物流関連業務に従事。18年3月より株式会社ゼロワンブースターに参画。大企業のオープンイノベーション活動やスタートアップの支援に取り組む、アクセラレータープログラムを担当。19年2月に株式会社funky jumpを創業。コワーキングスペース向けコミュニティ形成支援サービス「TAISY」の運営とコミュニティ形成のコンサルティングを行う。Polar Bear Pitching 2019仙台予選グランプリ。フィンランドにて行われた同本選でファイナリスト。2008年リコージャパン株式会社入社。大手顧客向けプリセールスを経て株式会社リコーにおいて新規事業開発業務に従事。主にPRマーケティング、オープンイノベーションによる事業共創を担当。TRIBUSには2019年度サブリーダとして参画、2021年度キャプテンとして推進。

目次

  1. コミュニティのよさは「課題解決の流通量」で決まる
  2. 「解決策」よりも「課題」にフォーカスする
  3. 課題解決の「頻度」と「強度」が、信頼関係を維持する
  4. 「非言語コミュニケーション」でコミュニティはつながる
  5. 「TAISY」のスマートではないマッチング
  6. 小さいコミュニティだからこそできること

コミュニティのよさは「課題解決の流通量」で決まる

——よいコミュニティとは何でしょうか?

青木さん:いろいろ文献をあさったり、ケーススタディをしている中で「いいコミュニティとは何か」が見えてきました。

コミュニティに所属している人たちの誰かが課題を持っていて、誰かがその解決策を持っているとします。そこでマッチングが起こるとその二人はコミュニティにいることを実感できます。ビジネスのように成果が約束されているわけではないけれど、誰かが自分の課題を解決してくれるかもしれない。そんな期待感の中でたくさんの課題解決がなされているコミュニティが、いいコミュニティです。

その課題解決というのは、ビジネスマッチングなどの難易度の高い話に限りません。「今日お昼一緒に行こうよ」と言えば「いいよ」と言ってもらえるとか、もっと手前で言うと、挨拶したらちゃんと返してくれるみたいな、そういう細かいことも課題解決です。互いにそういった課題解決をし合える人たちの繋がりをコミュニティと呼んでいて、その課題解決の流通量が多いコミュニティがよいコミュニティなのです。

「解決策」よりも「課題」にフォーカスする

——どうしたら課題解決の流通量は増やせるのでしょう?

青木さん:「私、こういうことができます」という解決策を並べるよりも、「私、今これに困っています」という課題の情報を収集することが重要です。そうすると、課題を持つ人に対して「どこの誰々さんが、それできるって言ってましたよ」と、解決策を持つ人をつないであげることができます。

解決策は並べておけるんですよ。「僕、何屋です」という看板はずっと置いといていい。一方で課題はそうではなく、見せたい人と見せたくない人がいたり、劣化したりします。

例えば、僕がFacebookで「エンジニア募集してます」と投稿をしたとします。そこで、過去に嫌な思いをさせられた人から「俺、やるよ」と言われたら、嫌でもちゃんと何かコメントを返さなきゃいけません。声をかけてるのは僕の方なので。そういう細かいちょっとした嫌なことって、課題を持っている側には結構あったりするんです。一方、解決策は常に表に並べていていいんです。その解決からお金が生まれたりもするので。

——課題を見つけるにはどうしたらよいでしょうか?

青木さん:課題を拾ってくるというのは地道な作業で、信頼関係が大事になってきます。

震災復興のボランティアのときには、おじいちゃん・おばあちゃんたちから本音を聞くために、一緒にゲートボールや草刈りまでやりました。そういう小さな共同作業から積み上げた信頼関係があるからこそ、「実は家族を失って寂しい」とか「あそこの誰々さんが困っていたからなんとかしてあげたい」などの相談が出てくるものでした。

課題解決の「頻度」と「強度」が、信頼関係を維持する

——信頼関係を築くコツはありますか?

青木さん:ゼロから信頼関係を築こうとすると大変なので、誰かが間に入ってつなげてあげるとスムーズです。「私の紹介する◯◯さんです」と言われれば安心できますし、その間に立つ人だって、紹介した理由があるわけで。「同じ✕✕をやっている人だから」とか、「歳が近そうだから」とか、人それぞれが膨大に持っている特徴の中で「これ」という理由を選び出す編集力は人間の脳の優秀なところだと思いますね。

実は、僕のひいおばあちゃんが仲人をやっていて、サービスの着想はそこから得ています。ばあちゃんがよく「私の顔に免じて」と言っていたのですが「ばあちゃんが言うんだったら…」と、見ず知らずの男女がわざわざ着飾って出会い、それで結婚までしちゃうわけですから。

ただ、信頼関係があっても、課題解決がないと良いコミュニティは維持できません。

例えば、小学校のときに仲の良かった友達から、急に投資の話とか受けたら、「ちょっと大丈夫?怪しいぞ」となるじゃないですか。信頼関係は劣化するものです。信頼関係を劣化させないためには、定期的なコミュニケーションが必要で、それもある程度の「強度」が必要となります。

例えば、大学時代の「よっ」としか言わないような友達、「よっ友」ですね。それもコミュニケーションをとっていないわけではないけれど、強度が低すぎます。お互い何らかの課題解決をしていく中で、信頼関係はより強化されていき、やりとりされる課題のレベルが上がっていきます。

「非言語コミュニケーション」でコミュニティはつながる

ーさまざまな課題感を持つ人たちを、どうつなげたらよいでしょう?

非言語におけるコミュニケーションというのが極めて重要だと思います。

例えば、コワーキングスペースでドリンクバー前にいる利用者は、その瞬間はきっとリラックスしています。もしランチを一人で食べていたら。声かけてもいいのかなとか思うことがありますよね。

弊社が入居している仙台のenspaceというコワーキングスペースでは、「GLOBAL Lab SENDAI」というビジネスコンテストのサポーターとして場所を提供しており、僕はコンテストのメンターをやらせていただきました。そのプログラムに参加した学生さんに対して、インターン生を募集したことがあります。その際に応募をくれた学生さんが、「実はずっとenspaceで眺めていました」と言ってくれていて。僕はそのことに気づいていなかったのですが、僕が働いてる姿を近くで見てくれていて、会社の空気もなんとなくわかったのだと思います。結果として「funky jumpでインターンしてもいいかな?」と、障壁が下がったのかもしれません。

無理やりコミュニケーションをとらなくても、非言語コミュニケーションを通じて、最初のきっかけを作ってあげられるところが、コワーキングスペースのいいところだと思います。

「TAISY」のスマートではないマッチング

ーー改めて、TAISYとはどんなサービスか教えてください

青木さん:TAISYはコワーキングスペースのスタッフの人たちが、利用者と日々雑談する中で得た情報を蓄積・共有するサービスです。

例えば、「〇〇さんが最近新しいあの分野に興味を持っているらしい」とか「✕✕さんがちょっと落ち込んでるらしいからご飯に誘ってみようよ」とか、そういったコミュニティ形成活動のきっかけになるサービスを作ってます。

実はTAISYの今の機能は、被災地でのコミュニティ形成とまるっきり同じことをやっています。 震災ボランティアでは、スタッフが「今日はどこどこのおばあちゃん、こんな感じで元気そうだったよ」みたいな些細なことを集めてくるのですが、思い返してみたらTAISYと一緒だと気づきました。そういった些細な情報によって、徐々にコミュニティが出来上がっていくのです。

そういう意味では、TAISYってスマートじゃないんですよ。コワーキングスペース内の人をマッチングさせようと思ったときに、自動的にハッシュタグみたいなものでマッチできれば便利ですよね。でも僕はそれよりも、間に人が立って、その信頼関係で情報を得てマッチングさせる仲人みたいな人がいる方が、きっといいコミュニティができると思っています。そういう仮説に基づいて今のTAISYをつくっています。

コワーキングスペース向けコミュニティ形成支援サービス「TAISY」

小さいコミュニティだからこそできること

ー最後に、登壇予定の「地方でつくるスタートアップのエコシステム」の概要を教えてください。

青木さん:地方からスタートアップを生み出そうという取り組みは、日本中でやっているわけですが、地方ならではの強みは特定の人たちへ向けて施策を打てることだと思うんですよ。

スタートアップがすごく多い状況だと、選考をちゃんとしなきゃいとか平等にしなきゃとか、そういった公平性が重要です。

ところが地方だと「平等って言ったって、対象となる会社がそもそも数えられるくらいしかいないじゃないか」みたいな、そういったケースも多分に発生します。そうすると、対象を決め打ちした状態で施策を集中投下できます。

「僕、スタートアップやります」と言って挙げたその手を下ろさせないよう、みんなで一丸となって全力で応援できるのが、地方のスタートアップエコシステムの強みではないかと考えています。

当日は、仙台の事例紹介をした上で、筑波や京都などの事例も聞いていきたいと思います。視聴者の方にとって「これはうちの町でもできるんじゃないか」「こういうところから巻き込んでいけばいいね」といったことが見えてくるような、価値のあるセッションにできればと思います。

青木さんご登壇セッション「地方で創るスタートアップエコシステム」

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インタビュー前編では「大企業を辞めスタートアップを地方で起業する、逆張りキャリア|登壇者インタビュー(前編)」と題して、青木さんの「逆張り」のキャリアについて振り返っていただきます。

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