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果物の皮が化粧品に変わる日——OIST 発 EF Polymer、農業の次は非農業分野で韓国市場を攻める【Ryukyu Launchpad 2025】

本稿は沖縄県主催のスタートアップ支援プログラム「Ryukyu Launchpad 2025」(韓国コース)の Demo Day に登壇したスタートアップを取材したものです。

オレンジやバナナの皮から超吸水性ポリマー(SAP)を作る——そう聞くと農業用途を思い浮かべるかもしれない。実際、沖縄科学技術大学院大学(OIST)発スタートアップの EF Polymer は2019年の創業以来、累計700トン以上を20カ国超の2万軒以上の農家に届けてきた。

だが同社が次に見据えるのは、化粧品や衛生用品といった非農業分野への本格展開だ。
Ryukyu Launchpad の韓国コースに参加した中尾氏が、現地15社とのミーティングで得た手応えと今後の戦略を語った。

自重の200倍を吸う
「捨てられるはずだった果物の皮」

EF Polymer の「EF」はエコフレンドリーの略だ。同社が手がけるのは、オレンジの皮やバナナの皮など従来廃棄されてきたバイオ廃棄物を原料とした超吸水性ポリマーで、自重の約50倍から130倍の水分を吸収できる。
既存の SAP 製品は石油由来で環境負荷が高く、製造・廃棄過程でのマイクロプラスチック残留が課題とされてきた。
同社のポリマーは100%天然由来かつ完全生分解性を備え、1年以内に土壌や海洋環境に還るのだという。

「100%天然で生分解性のポリマーをバイオ廃棄物から製造しています。完全にオーガニックなので、1年以内に土壌や海洋環境に還ります」(中尾氏)。

農地に適用すると土壌の保水力と保肥力が向上し、約40%の節水と約20%の肥料削減、収量の安定化が期待できるという。
さらに注目すべきは、栽培した作物の残渣を再びポリマー製造に活用する循環型モデルを構築している点だ。
2020年にインドで販売を開始して以来、日本、米国、フランスなどに市場を拡大。本社を沖縄に置きつつ、インド・ウダイプルに製造拠点、米国デラウェアに現地法人を設立している。

おむつから化粧品まで——
石油由来ポリマーの「置き換え」を狙う

EF Polymer の成長戦略で注目すべきは、農業にとどまらない展開にある。
同社はこれまでに3つの製品プラットフォームを開発してきた。農業用、衛生用品用(アイスパック、生理用品、おむつ)、そして化粧品・パーソナルケア向けの増粘剤だ。
石油由来のポリマーが広く使われる化粧品、衛生用品、日用品などの分野で、天然素材への置き換えを進めることで各社の GX(グリーン・トランスフォーメーション)を支援するのが狙いだ。

具体的には、岩谷産業との協業で生分解性保冷剤「Cy-Cool」を開発した。
年間15億個が廃棄されるという石油由来保冷剤の代替を目指すものだ。
並行して吸水シートの開発も進めており、化粧品、衛生用品、農業など複数分野での応用を見据えている。

「ポリマーと聞くとおむつや生理用品を想像されるかもしれませんが、化粧品、パーソナルケア、医療など様々な分野で広く使われています。既存のポリマーは主に石油由来で環境負荷があるため、より環境に優しい製品の実現に向けて各社と協力しています」(中尾氏)。

韓国15社との面談で5件の MOU——
レクチャーが効いた

今回の Ryukyu Launchpad 韓国コースでは、化粧品と衛生用品の分野でのパートナーシップを重点的に探った。
事務局や01Boosterのサポートのもと、韓国企業15社とのビジネスミーティングを実施し、5件の MOU・NDA の締結にこぎつけた。

さらに11件の PoC(製品評価)と4件のメディア露出を実現している。
守秘義務契約のため具体的な企業名は公表されていないが、衛生用品分野のリーディングメーカーや化粧品分野の成長スタートアップなどとの商談が進んでいるという。

中でも中尾氏が手応えを感じたのが、渡韓前に実施されたレクチャーセッションだった。

「化粧品分野の業界専門家とつながり、市場トレンドや競合分析について学ぶことができました。自分たちだけでリサーチするよりもずっと多くのことを得られ、企業に対してどんなポジショニングで臨むべきか、事前にストーリーを組み立てる自信につながりました」(中尾氏)。

製品化までのロードマップとしては、現在の PoC 段階からプロトタイプ開発、初期稼働テストを経て製品発売まで1年〜1年半を想定している。
現地の認証・規制対応や市場調査を並行して進め、メーカーが正式に採用できるよう R&D チーム同士の密な連携で実現を目指す。
事業開発だけでなく技術面での協業を重視する姿勢が、同社の戦略の核にあるという話だった。

「Mother Nature Has a Solution for Every Problem(自然はあらゆる問題に対する解決策を持っている)」——中尾氏がピッチの冒頭で掲げたこのフレーズが、EF Polymer の原点だ。
創業の地である OIST と沖縄から、果物の皮という「廃棄物」を武器に世界の産業構造を変えようとする挑戦が続いている。

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