国内1万台超のカメラ実績を引っさげ米国へ——沖縄発 LiLz、ヒューストンで掴んだ石油・ガス市場参入の糸口【Ryukyu Launchpad 2025】

本稿は沖縄県主催のスタートアップ支援プログラム「Ryukyu Launchpad 2025(米国コース)」の Demo Day に登壇したスタートアップのピッチをお届けする。
工場やプラントに設置されたアナログ計器を、カメラと AI で遠隔読み取りする IoT サービスを提供しているのが LiLz(リルズ)だ。
工事不要の後付け型カメラは防水・フラッシュ搭載で、バッテリーは3年持つ完全ワイヤレス仕様。
日本国内では400社以上に1万台以上のカメラが稼働しているが、海外での売上はほぼゼロ——その現実を変えるべく、同社は Ryukyu Launchpad の米国コースを通じてテキサス州ヒューストンへ向かった。
海外事業開発担当の政田氏がピッチで語ったのは、アポなしの飛び込み訪問から始まった泥臭い市場開拓と、そこから生まれた具体的な成果だった。
「省人化」が響かない市場で見つけた突破口
LiLz が米国市場の主戦場に選んだのは、石油・ガス産業の中心地ヒューストンだ。
渡米前に LinkedIn で100件以上のコネクションを構築したものの、オンラインでミーティングを確定できた件数はゼロ。
不安を抱えながらも「キャンセルできないなら行って何とかしよう」と腹をくくり、アポなしの飛び込み訪問に切り替えた。
結果、4社との対面ミーティングを実現し、ネットワーキングイベントでは10人以上の業界関係者との接点をつくった。
この泥臭い営業活動から、日本では見えなかった3つの重要な気づきを得たという。
「日本でよく使う『省人化を実現します』というメッセージは、米国、特に石油・ガス業界ではポジティブに受け取られません。現地の人々を雇用してその仕事を守るという使命感が強いからです。コストはそれほど重要ではなく、技術が気に入れば払ってくれます。そして最も重要なのは、市場に参入するには正しい人を見つけること。正しい人を見つけて1台でも売れれば、巨大な市場への扉が開きます」(政田氏)。
日本国内で1万台を売ってきた「省人化」というメッセージが通用しない——この発見は、現地に足を運んで初めて得られるものだった。
日系産業ガスメーカーでの実証
オイルメジャーへの突破口
ヒューストンからカリフォルニアに戻った政田氏が最初のフィールドトライアルを実現したのは、日系産業ガスメーカーの米国法人との協業だった。
水素ステーションの圧力計を遠隔監視するというものだ。
しかし、ローカライゼーションには予想外の壁があった。
日本で1万台以上が問題なく稼働しているにもかかわらず、米国ではカメラ固定用の治具が現地で入手しにくい、アプリのタイムゾーン対応が必要など、実際に現地で運用して初めて見える課題が次々と浮上したのだ。
政田氏はこの失敗をポジティブに捉えている。
大量出荷の前にこの段階で修正できたことは、むしろ幸運だったという話だった。
それでもプログラム期間中の成果は着実に積み上がった。
ミシガン州の鉄鋼メーカーから初の購入注文を獲得——たった1台のカメラだが、LiLz の海外戦略における歴史的な一歩だ。
コネチカット州の化学メーカーとのトライアルも開始した。
そして最大のブレークスルーは、オイルメジャーへの突破口を開いたことだ。投資家の紹介を通じて同社が LiLz の技術を評価し、正式な技術評価の実施にコミットを得た。
「準備は大事ですが、実行はもっと大事です。LiLz では二流の戦略、一流の実行と言っています。2026年は実行にフォーカスします。直近の目標は、現在2社と進めているトライアルを正式契約に転換すること。今年は少なくとも3回渡米して、突破口になりうる人を見つけ、ビジネスを拡大します」(政田氏)。