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沖縄県がスタートアップと開拓する「アジアのゲートウェイ」への未来── 「Ryukyu Launchpad 2025」で創る、新たな企業誘致の波

沖縄県が2025年度から初めて実施した海外展開支援事業「Ryukyu Launchpad 2025」。
万国津梁の精神を受け継ぎ、地理的な近さを活かしてアジア市場への進出を支援するこのプログラムは、従来の企業誘致とは異なる「人との繋がり」を軸にした新しいエコシステム構築を目指している。

2026年2月5日に開催されたDemo Dayでは8社がピッチを行い、「いつかやる」ではなく「今、具体的にどう進めるか」という明確な意識のもと、初年度から確実な成果を残した。
OISTを中心とした国際人材の集積、チャンプルー文化が育むフラットな交流、そして「まずは行ってみる」心理的ハードルの低さ——沖縄ならではの強みを活かし、スタートアップのグローバル展開を加速させる取り組みについて、沖縄県商工労働部 産業政策課 課長の座喜味氏がプログラムを運営する01Boosterの川島健氏と語り合った。

川島:今回、「Ryukyu Launchpad 2025」という海外展開支援事業を初めて実施されたと思います。その背景についてお伺いできますか?

座喜味:今回の狙いとして、沖縄県ではこれまでスタートアップの創出、成長支援、エコシステムの構築を重点的に支援してきました。一方で、海外市場にスタートアップをどう繋げていくかという点について、ここ数年検討を重ねてきたところです。

今日のプログラムでもありましたが、沖縄は地理的にアジアとの距離が近く、「万国津梁」という言葉の通り、かつてアジアと世界を繋ぐ架け橋としての歴史的な役割を担ってきました。そうした背景を踏まえ、海外市場を見据えたスケール支援に本格的に踏み出したのが、今回のプログラムです。

川島:2026年2月5日(木)に開催した「Ryukyu Launchpad 2025」の成果発表会(Demo Day)では、8社から事業内容やプログラムでの活動についてピッチが行われました。率直な感想や印象をお聞かせください。

座喜味:Demo Dayを通じて感じたのは、初年度の成果として、各社が確実に実績を作ったということです。この後さらに数字として表れてくるのではないかと期待しています。とくに海外展開について、「いつかやる」ではなく「今、具体的にどう進めるか」という明確な意識を持って取り組んでいた点が印象的でした。

また、現地でのヒアリングや商談を通して、「この市場は想定と違った」「この分野に可能性がある」といった気づきを得ながら、プロダクトそのものや戦略を見直していった企業の姿が見て取れました。ここから実証等を通じて、次の動きに発展していく大きな可能性を各社から感じたところです。

川島:参加企業は業界も国もバラバラで、それぞれ素晴らしい活躍をされていましたね。

次に、沖縄ならではの価値というポイントについてお伺いしたいと思います。Demo Day当日は「万国津梁」をキーワードに、午前中に津梁アクセラレーターのDemo Day、午後にRyukyu Launchpad、さらにNextTという台湾のDemo Dayと、まさに沖縄をハブにした1日でした。今回のRyukyu Launchpadを通じて、沖縄が海外のハブになることに対する手応えを教えてください。

座喜味:Demo Dayを通じて感じたのは、初年度の成果として、各社が確実に実績を作ったということです。この後さらに数字として表れてくるのではないかと期待しています。とくに海外展開について、「いつかやる」ではなく「今、具体的にどう進めるか」という明確な意識を持って取り組んでいた点が印象的でした。

座喜味:万国津梁として外に出ていくという側面に加えて、もう一つ文化的な要素として、沖縄ならではの「おもてなし」がビジネス交流の場面でも活かせるのではないかと感じています。歴史的・文化的に言えば、いわゆるチャンプルー文化がその背景にあります。

海外の事業者や投資家と向き合う時にも、違いはあるという前提で前向きに受け止めながらフラットに対応できる——そういう土壌が沖縄にはあると思います。

また、沖縄の強みとしてもう一つ挙げるなら、沖縄科学技術大学院大学(OIST)です。OISTの修了生やそこから起業した方が、今日のプログラム参加者の中にもいらっしゃいました。国際的なバックグラウンドを持つ方が多いため、海外の文化や価値観を理解しながら柔軟に受け入れる力が日常的に培われています。

さらに地理的な強みとして、スタートアップにとって、沖縄をハブにして「ちょっと海外に行ってみようかな」と思える距離感があります。海外展開を目指す際に、心理的なハードルが相対的に低くなり、市場調査にも挑戦しやすい環境があると考えています。

川島:実際に今日登壇された企業で4名ほどが海外出身の方でした。フィリピンから来られた方もいて、日本からのグローバル展開という中で、当事者が日本人だけではないというのは珍しい現象だと思います。OISTのインパクトは大きいですね。「チャンプルー」というキーワードも興味深いです。

では、今後の展開についてお伺いします。今回参加いただいた8社のスタートアップに対して、今後のグローバル展開の支援をどのようにお考えですか。

座喜味:この事業もそうですが、今回採択された事業者が継続していくことが真の海外展開に繋がると考えています。県の政策として企業のステージに応じた支援を行っていますので、他の支援施策やVC、実証フィールドとの繋ぎなど、支援メニューを用意しています。次のフェーズに進んだ企業には、そうした支援サービスも提供していく考えです。

川島:なるほど。沖縄のエコシステムにはいろいろな施策がありますよね。新しいものも既存のものも含めて、その中でシナジーを生み出していけたらと。

座喜味:そうですね。エコシステムの中でシナジーを生み出し、成長をさらに加速できるよう意識しています。

川島:例えば、今日発表されたストラウトさんは、静岡から沖縄に本店を移転して、今回グローバル展開に取り組まれています。沖縄のアクセラレーション事業が入り口になって、J-Startup OKINAWAにも選ばれている。こうした他の地域から沖縄に来てプログラムに参加し、さらにインドネシアなどの海外と繋がり、別の事業にもステップアップしていく流れが作れるのは素晴らしいですよね。

座喜味:はい、まさにそう思います。

川島:ありがとうございます。では、沖縄県として今後スタートアップ支援や海外展開支援をどう発展させていきたいか、お聞かせください。

座喜味:エコシステム自体はすでに構築されており、現在79の構成員がさまざまなセクターから参加しています。その中に海外志向という要素も入れていく必要があると考えています。沖縄県は内閣府からスタートアップのグローバル拠点都市(NEXTグローバル拠点都市)にも選定されており、エコシステム構築の方向性も明確になってきました。

ただし、行政だけが進めていくのではなく、民間事業者やさまざまなセクターと一緒に盛り上げていくことが重要です。エコシステムを育てながら海外展開の部分を強調していきたい。

スタートアップの成長に関わる人材を集め、流れを作り、取り組みに反映させていく——そのようにエコシステムを進化させていきたいと思っています。

川島:まさに「アジアのゲートウェイ」。万国津梁とも近いコンセプトですね。沖縄からアジア、グローバルに出て行きやすい環境を整備してくださっている。

もう一つ、今回のプログラムで沖縄県として展開先の地域も選んでいますよね。アジアが中心ですが、市場規模や成熟度を考えると、世界トップレベルの人材や企業が集まる地域も狙っていくのでしょうか?

座喜味:はい。総合的に判断しての候補地の選択になっています。事業設計についてもいろいろコミュニケーションを取りながら、実践的な支援先として北米なども選定できたらと思っています。

川島:次に、沖縄県が目指す経済・産業の将来像において、スタートアップ支援をどう絡めていくのかについてお聞かせください。

座喜味:沖縄県の特徴として、産業政策課でスタートアップ支援を行っています。沖縄のリーディング産業は観光ですが、観光に加えて既存産業も育てていく必要があります。スタートアップ支援と既存事業者支援の両軸があり、オープンイノベーションによる連携も重要です。

付加価値の高い産業を創出し、産業全体に波及効果を生み出すことがスタートアップに期待されている部分でもあります。スタートアップが雇用を生み出すことも含め、産業政策全体にとってますます重要になってきます。その中で、成長を県内や国内に留めるのではなく、海外にしっかり接続してスケールさせていくことが必要だと考えています。

川島:エコシステムの中でフォーカスされるテーマとしてブルーエコノミーやヘルスケアがありますね。既存産業と新しい産業を掛け合わせて産業フォーカスエリアを決めていくというのは、今回印象的でした。

川島:最後に、今後のメッセージについてお聞きします。Ryukyu Launchpadは来年以降も続いていくと思いますが、どのようなスタートアップに応募していただきたいとお考えですか。海外展開は「まだ早い」と感じているスタートアップの方も多いと思います。そうした方へのメッセージをお願いします。

座喜味:今回のプログラムは初年度ということもあり、成功事例を多く作りたいという狙いから、ハードルをやや高めに設けていた面もあります。ただ、海外展開は特別な企業だけのものではないということもしっかりメッセージとして伝えていきたいです。

まずは沖縄から一歩踏み出してみるということを気軽にできる環境を作りたい。Ryukyu Launchpadを通じて、一度海外に出てみるという経験を次の成長に繋げてほしいと思っています。参加を検討されている皆さんに、次の展開に繋がるきっかけとして活用していただければと思います。

川島:「まずは行ってみましょう」ですね。そのきっかけとしてプログラムが用意されているということですね。

座喜味:先ほど川島さんが企業誘致のキーワードに触れていましたが、企業誘致に関して言えば、沖縄県は30年程前から本格的に取り組んできた経緯があります。製造業を中心にIT産業なども進めてきており、土地の提供や貸し工場の整備など、従来型の企業誘致政策の手法がありました。

ただ、スタートアップに関しては違う切り口で、新しい企業誘致のあり方が生まれるのではないかと感じています。

この1年間見てきた中で、人との繋がりが企業を呼び込むという要素が非常に強いと実感しました。沖縄は島であるため土地が限られていますが、逆に石垣や宮古といった離島にも波及できるスタートアップの可能性もあります。海外展開の話に加えて、県内の基盤づくりも地道に築き上げていく必要があると考えています。

川島:まさに。場所を変えてみる、きっかけを作るといったことが大事ですよね。人との繋がりというのは本当にその通りで、カンファレンスやDemo Dayをやると人が集まり、繋がりの繋がりが広がっていく。マスプロモーションで広く告知するよりも、知り合いの知り合いという形で自然と広がっていく。

そして一度来て好きになった人が毎年リピートする。今日も、(本イベントとは別の)去年のカンファレンス「ANTB(Asia New Travel Bootcamp)」で知り合った韓国企業の方が「また来ましたよ」と。そういったリピーターを増やしていく、繋がりを広げていくことが大切ですよね。

座喜味:そうですね。繋がりがそこまで広がっていくというのは素晴らしいですね。

川島:友達の友達はまた友達、という感じです。

座喜味:まさに。そういう発想がスタートアップの世界では大事ですよね。

川島:本当に。さっき会った方も、LinkedInに「沖縄に行く」と書いたら、共通の知り合い——チリの方なんですが——が「01Boosterが沖縄にいるらしいよ」と繋いでくれて、先ほど繋がったという。こういうことがよく起きるんですよね。海外のエコシステムの方も多いですし、オープンな雰囲気がある。一度来て飲み会が楽しくて、またリピートになるという。まさに繋がりが人を呼ぶということですね。

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