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「起業家と共に新しい価値をつくる」アクセラレーター担当者が語る、事業創造の想いとは vol.2

■ゲスト
加藤 智明(Tomoaki Kato)※写真右
原田産業株式会社Business Co-Creation Team(新規事業開発チーム)Project Manager。2009年大学卒業後、同社に入社。ラボファーマチーム、メディカルチームにて、海外製品の国内展開0→1フェーズを手掛け、数多くの成功と失敗を経験。2019年度より現チームで既存事業の枠にはまらない新領域ビジネスの立ち上げをミッションとし活動をスタート。「HARADA ACCELERATOR」の運営事務局メンバーとしても従事している。

佃 征志郎(Seishiro Tsukuda)写真中央
原田産業株式会社Business Co-Creation Team(新規事業開発チーム)Project Manager。サンフランシスコの大学で工業デザインを学び、3DCADに明け暮れる。2009年同社に入社。デザイン→商社という大きな挑戦だったが、入社間もなくして欧州の食品製造設備を取り扱う半外資の同社子会社へ出向し、さらなる挑戦の日々。2019年度より現チームで新領域ビジネスの立ち上げをミッションとし活動をスタート。「HARADA ACCELERATOR」の運営事務局メンバーとしても従事している。

■インタビュアー
川島 健(Takeru Kawashima)写真左
早稲田大学卒業後、日系医療機器メーカーにてEMEA地域の新規市場開拓、外資系医療機器メーカーにてプロダクトマーケティングに従事。2017年に01Boosterに参画し、複数のアクセラレータープログラムのマネージメント、及び海外のアクセラレーターとの連携を推進。2018年にアジアのVC・アクセラレーターのコミュニティであるAcross Asia Allianceを立ち上げる。

 

川島:まずはお二人のご経歴を教えていただけますか。

:僕は新卒で原田産業に入社して、今年で11年目です。入社して10日程度で、原田産業とオランダの会社との合弁会社に出向しました。その会社では、欧州の食品産業用設備の輸入、設置立ち上げ、アフターメンテナンスまでを行います。
入社前は、色んな業界・事業に点々と携わっていく姿を思い描いていましたが、蓋を開けるとその畑に10年いました。ただ同じ畑の中でも深く観察していると、様々なやり方があるという発見が常にありましたね。そして去年の4月に、事業創造を行うBusiness Co-creation(新規企画部門)に異動になり、色々新たな試みを行なっています。

川島:今まで新規事業を立ち上げられたことはありますか。

:色々やらせてもらいましたが、1つは味覚に関して。例えば、ケーキを食べたときに感じる「美味しい」という感覚は、人それぞれじゃないですか。それを誰が見ても理解できる、普遍的な数字に置き換えることをやりました。「美味しさ95点」という単純なものではなくて、食べたときの美味しさは複雑な構成で成り立っているうえに、食べる人によっても感覚が違います。
複雑なものをそのまま複雑に表現するアプローチで、それを切り口に機械販売に繋げようというのをやりました。結果としては大きな成果が出たという訳ではないのですが、1つの面白い取り組みだと、色んな会社からは興味をもってもらえました。

川島:市場にはもう出ているのですか。

:秘匿データとしているので、一般的には公開されていないものなんですけど、弊社のある製品の説明材料として使用しています。

川島:それは面白いですね。加藤さんはいかがですか。

加藤:僕も2009年に入社しまして、佃と同期で新卒入社です。最初の3年は東京のラボファーマチームに配属されまして、製薬工場のオペレーターが身につけている服・手袋・靴など、クリーンルーム用の製品を海外から持ってきて、日本で販売するということをやっていました。
ずっと同じことを続けていても面白くないので、新卒2年目くらいに新しいことをやり始めたのですが、そのうちの1つがインド市場開拓でした。当時、自分が思い描いたビジネスプランを役員の前でプレゼンして、OKが出ればチャレンジできるという制度がありました。
日本で販売している自分たちの製品を、インド製薬市場にも広げてみようというプランです。実際にインドに行き、ポテンシャルディストリビューターに紹介しました。その中でエンドユーザーとも話をして、色々と痛感しました。今までは、輸入してきたものを日本国内で販売していたんですけど、輸出すると話が全然違いましたね。
海外への売り込みになりますし、言語やビジネススキルの問題もあり、自分のレベルでは全然通用しないと思ったんです。しかしたまたま製品が良かったのもあって、当初の見込みとは異なるも、市場に認められた製品もありました。あれから7~8年経ちますが、今でも輸出し続けていると思います。
金額的には大きくはなく数千万円程ですが、そこで挫折を経験するもちょっとした自信というか、動けばどうにかなるんだなと思いましたね。
もう一つ新規事業ではないですが、新商品として新しいサプライヤーを見つけていました。この商品は、今でもチームの柱の一商品として育っています。そこから医療機器の事業に移って約8年経つのですが、医療機器でも新商品開発は積極的にやってきました。ただ、医療機器の上市はものすごく時間がかかるんですよね。

原田産業が薬事申請も行うので、薬機法そのものを理解し、薬事戦略を立案する必要があります。薬機法も一から勉強しました。ニッチな領域の医療機器を扱うので類似品がないケースも多々あり、どのような考え方で進めれば良いのかを、専門家や学会のKOLとなる先生方にも相談しながら進めました。
医療機器のビジネスは保険適応を取るまでのプロセスで、ほぼそのビジネスの勝負が決まるんですよね。そういうビジネスも体験しながら、8年間良い経験を積めました。在任中、5つか6つほど手掛けた案件がありましたが、将来大きく花が咲く可能性のあるのは1つだけですね。やはり数を打たないといけないと感じています。

海外と日本を結びつけることが強み

川島:今回の「HARADA ACCELERATOR」は、御社として初めてのコーポレートアクセラレーターですが、海外スタートアップの日本進出支援や日本スタートアップの海外進出という、結構大変なところも1つの支援メニューとして加えていますよね。実はこれって結構レアなんです。
日本の事業会社が実施しているアクセラレーターは国内のみで、クロスボーダーで行なっている企業はあまりありません。その中で御社は、海外スタートアップも採択することにされました。今回やろうと思った意図を教えていただけますか。

:スタンダードをまず知らなかったというのと、それを商社として元々自然にやっているからでしょうか。自分たちの事業と結びつけて、海外から持ってくるほうが我々にとっては自然な動きです。弊社では、日本のものを日本で展開させるのが、逆にあまりないですね。

加藤:日本と海外との間でギャップがあるほど、価値が出せますね。海外で結果が出始めたばかりのスタートアップの、日本市場エントリーを手伝う。いきなり日本に来れるかと言ったら来れない。そのギャップがあるからこそ、我々のいる意味・価値が出てくるのかなと思います。

川島:今まで海外スタートアップを日本に連れてくることは、まだやったことはないですか。

加藤:急成長のJカーブを描くようなスタートアップは、まだ経験がないですね。オーナー企業であったり、設立から10年未満の若い企業というのはあります。

川島:原田産業さんは、異なるものを繋いでいく活動をやられていると思いますが、自分たちで事業を起こす0→1の社内新規事業に関しても教えていただけますか。
佃さんと加藤さんが所属しているBusiness Co-Creationチームでは、新規事業創造とオープンイノベーションの両方の役割を担っていると思いますが、今自分自身が挑戦者としてどんな事業を検討・展開しようとしていますか。

:色んなスタートアップの情報や、今までの仕事で関わった企業の事業を見て、自分だったらこうやるなとか、自分がやってきたところに近い着想が生まれるじゃないですか。だから「これはいけそうだな」と思いついたものはいくつかあります。
しかし自分がいざ新規事業をやるとなったときに、自分はこれだと思っているけれど、これは本当にやりたいことなのか?という点は、すごく問うようにしています。だから「これをやりたい根源は何なんだろうか」と考えるようになりました。

すると、僕は食べることが大好きなんですよね。やっぱり飯に結びつけたいという想いがあります。今やろうとしているのは、健康になりたいけど、美味しいもの、好きなものを食べたい。そのバランス感を大事にしたパフォーマンス向上ツールです。
サラドの細井さんとか、サラダを食べてパフォーマンスを上げることで、見えなかった損失の部分を改善していけるような事業を展開していますが、それはとてもいい考え方だと思っています。そこで、食べ物の嗜好性と健康面をどのようにすれば両立できるのかなと。両立するための指標として行動と結果がわかるアプリケーションがあったら面白いよね、というのがありました。これはどこかのスタートアップ一社とやるものじゃなくて、複数社(3〜4社以上)のスタートアップと一緒にやっていかないと、おそらく実現できない。まさにそれは商社的なやり方だと思います。

川島:商社は規模が大きい新規事業を求められがちだと思いますが、そこを検討した結果、結局自分は何がしたいのか?という内発的動機が起点になり、今はすっきりしている感じなんですね。

:そうです。心のストレスはほぼないです(笑)。

お土産としての価値を、もっと上げてあげられるプラットフォームを作りたい

川島:加藤さんはいかがですか。

加藤:課題は沢山あるのですが、その中で今はお土産のプラットフォームみたいなものを考えています。ECの技術が上がってきて、商品を購入すると大体翌日には手に入れられる世の中ですよね。でもお土産はECに載せることはできても、そもそものお土産の価値は実際に手渡すときにあります。
自分が行ったことの思い出を誰かにシェアしたい、そういうのでみんなお土産を買いたいと思うんですけど、どこまでいってもECが主戦場にはならないんですよね。Amazonみたいなところでは買わない。EC化されない。
お土産はデジタル化されていなくてバラバラなんですよね。Webに「お土産10選」みたいなものがあるけど、結局何か調べない限りは見てもあまりよくわからない。基本的なものが2、3個出てくるだけです。 本当はその土地ならではのものとか、面白いものがきっとあるはずなのにみんな気づけない。何となく目についたお土産を買っていくと思うんですけど、そこにストーリー性だったり、お土産としての価値を、もっと上げてあげられるプラットフォームを作りたいんです。それをやるには、まずリソースが全然足りない状況です。
なのでそこをスタートアップの皆さんと一緒にやりたいと思いますが、もしいなければ自分たちで作っていかなければいけません。会社にノウハウもリソースもなく、どうやって自分のやりたいことを実現していくかという大きなチャレンジだと思っています。

川島:会社の業績が短期的に問題ない企業は、PLばかり追って新規事業をやりたくない人が実は多いですが、その点お二人は楽しみながら挑まれているので、とても理想的な新規事業担当者だと感じます。

加藤:自分の性格的に、ただ作業を粛々とやることができないんですよね(笑)。僕がやるべきことは、違うことをやって新しい価値を生み出すことかなと。会社に恩返しもできるし、それこそが今会社にいる意味だといつも思っています。

未来に必要なものを、先読みして展開できている

川島:今回アクセラレーターに掲げられているテーマに「ヘルスケア・ライフサイエンス」「食」もありますが、どんなスタートアップとどんなことを共創したいですか。

:先ほどお伝えしたのもそうですが、他にはオフィスグリコのヘルシー版のようなサービス「Oh My Green」を展開している会社があるんですけど、割と僕がやりたいことに近いんですよ。オフィス据え置き型サービスだけどデータを取ってて、食べている栄養素が何なのか?それをインオフィスの枠組みだけじゃなく、ウーバーみたいなのと連携を取って、ソリューションの枝葉をできるだけ広げたいんですよね。

加藤:医療分野でいうと呼吸器と産婦人科の領域は、比較的ヒットした製品や面白い製品が揃っているのかなと思っています。我々は呼吸器と産婦人科の中でも、ニッチな分野を取り扱っているのが特徴ですね。今すぐに花が咲かなくても、将来いずれ必要になるという考えです。
具体的には、禁煙の外来で使うスモーカライザーという製品があるんですけど、当時日本の喫煙数が男性70%程のときから、海外の動向をみているといずれ禁煙の流れは来るよねと話していました。それをひたすら日本の先生方に紹介して、当時全然反応しなかったんですけど、そういうのを地道にしていました。それが予想通り来て、今大きな柱の一つになっています。
あと女性の子宮頸癌を予防するための器具があるんですけど、海外だとワクチンとか摂取していて日本よりも先進的なんですね。唯一予防できる癌が子宮頸癌と言われているんですけど、そういうのもある者が20年以上前から見つけていました。
子宮頸癌という言葉自体もまだ浸透していないときに、それを扱い始めてようやくではあるんですけど、いずれ日本にも必ず来るよねと、じっくりやっていました。未来に必要なものを、先読みして展開できていると思います。

:あと我々はエンドユーザーで試せることが多いので、とくに工場とかのレベルだと食品に限らず、特定の場所に使えるんだけどどういう業態にハマるかわからない。というような、まだPMF(Product Market Fit)ができていないような状態でも、むしろウェルカムです。
今週はあそこの業界を10件回ろう、来週は別の業界を10件回ろうというのができると思いますね。そのフットワークの軽さは武器になるのかなと。

川島:とくに海外から日本に来る場合、遠い日本の工場とか、アプローチしようがないので喜びますね。

:しかもそれを1、2週間とか決められた期間で終わらせるのは、客先との関係性としての距離が近くないと無理だと思うので、そこはお役立てできると思います。

川島:期間を決めて行うアクセラレーターの枠組みだからこそ、結構インテンシブにできる。そのときに御社がある意味ハブになり、単純に横へ流すだけではなく、両者のことを知って微調整しながら事業開発を進み変えていくことができる。これは御社の強みですね。

日本には、圧倒的にスタートアップの数が足りていない

川島:御社は世界中を飛び回っていると思いますが、海外のスタートアップイベントとか参加される中で、とくに印象に残っていることはありますか。

:ポルトガルのエッグタルトが美味しかったことです(笑)。
ウェブサミットの締めで、最後にポルトガルの首相が出てくるんですね。これは国策なので、国をあげてスタートアップ支援をしていると。欧州のスタートアップが目指すようなプログラムにしてあって、首相が「やるぞー!」って手を振りかざしているのを見たときに、気合の入り方が違うと感じました。 あれだけの熱意だと、そこに乗っかる人の気持ちは変わってくるので、その辺りの国策の熱量を感じられたのはすごく良かったと思います。

川島:日本に足りないと感じた点はありますか。

:圧倒的にスタートアップの数が足りていないです。今やっている人たちは燃えているし、色んな想いをもってやっていますが、そもそもの数が違いますね。

加藤:聞いてみると、意外にまだまだアイディア段階ですか?という回答も持ってきてはいるんですが、その状態でも前に出て言うことは言って、チャンスが常にあるというのをすごく感じました。あと考え込むのではなく、動いているなと。
みんなまず動いて、自分が最初にチャンスを掴みに行こうとしています。チャンスを掴んだら、それをなんとか短期間で伸ばそうというのは、ブースで話を聞いているだけでも感じました。「まだこれは開発できていなんだけど」みたいな話で、まだフラフラした状態ですけど、何か糸口がないかと常に探しているような感じがして、刺激になりました。
我々は今回初めてのアクセラレーター実施ですが、社内で先陣を切るので、それを周りが見て「私もやりたい」と思ってもらえる、ロールモデルのような存在にならないといけないと思っています。

川島:社員を巻き込む、覚悟みたいなものがあるんですね。

加藤:後戻りはありません。片道切符できていますから(笑)。

:新しい会社を作る気持ちで挑んでいます(笑)。

川島:いいですね、年内に立ち上げですか。

:年内に!?そうですね、それくらいの勢いが必要ですね。我々がそういう存在になったら、社内は完全に火がつくと思います。

「起業家と共に新しい価値をつくる」アクセラレーター担当者が語る、事業創造の想いとは vol.1

■ゲスト鈴木 一平(Ippei Suzuki)※写真左原田産業株式会社Business Co-Creation Team(新規事業開発チーム)General Manager。2008年大学卒業後、同社に入社。クリーンテクノロジーチーム、コンシューマープロダクトチームでの営業及びマネジメントを経験し、2019年度より現チームでの活動をスタート。

HARADA ACCELERATORに応募する

※ 今回のインタビューは、01Boosterが運営するコワーキングスペース「有楽町SAAI」で撮影いたしました。(住所:〒100-0006 東京都千代田区有楽町1丁目12−1 新有楽町ビル 10階)【撮影日:2020年2月20日】
※ 本アクセラレータープログラム期間中、原田産業のコワーキングスペース(場所:大阪/心斎橋)と01Boosterのオフィス(場所:東京/有楽町)を無料で利用することができます。01Boosterのメンター陣とのコミュニケーションが日常的に可能になりますので、積極的にご利用ください。
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