特集:明治アクセラレーター2022|フェムテックが抱える課題
こころとからだ、テクノロジーができること(3)
2022年10月、六本木である展示商談会が開催されました。「Femtech Fes!(フェムテック・フェス) 2022」と題された会場には世界33カ国から200ものフェムテック関連商品が展示され、会期となった3日間で2,900名の来場者がやってきたそうです。
フェムテックーー。女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する領域の総称として、ドイツの月経管理アプリ「Clue」の創業者、Ida Tin氏が提唱した言葉で、グローバルでは「2028年までに222億9,000万ドル市場」とも「2030年までに1,030億ドル市場規模に達する」とも言われる一大市場になっています。
輪郭は曖昧ですが、主なジャンルには生理・妊娠・産後・更年期・セクシャルウェルネスなどがあり、デジタル要素を含む場合をフェムテック、それ以外をフェムケア(ショーツや食品など)と分類しているケースもあります。
国内でも矢野経済研究所が市場規模を642億円(前年比で約108%成長)と推計しており、経済産業省が実証実験プログラムを立ち上げて啓発活動を活性化させるなど、世界市場と合わせて国内でも拡大基調にあることがわかります。
また、コロナ禍ではメンタルヘルスに与えた影響が大きいという話題を前回お伝えしました。女性の体に関する影響も少なくなく、例えば在宅期間が長期化したことで家事負担が増え、女性のメンタルヘルスや肉体的な健康に悪影響を与えたり、家族が一緒にいることで出生率の上昇に繋がったとする調査結果も出ているようです。
本稿では前半のメンタルヘルスケアに続いて「体」に関するテクノロジー、特に女性に関するフェムテックについて引き続き明治のみなさんと国内の状況を整理してみたいと思います。
「女性特有の健康課題」が社会問題に
「生理に着目した商品が続々と増えていると感じています。「生理の貧困」という言葉も生まれてその実態を男女問わず知る機会が増えました。生理は「仕方ないもの」ではなく、快適に過ごすために社会全体で理解しようという意識が強まったのではないでしょうか」(明治スポーツマーケティング部 吉田菜々絵)。
世界的なESG/SDGsの流れもあり、国内でも女性やジェンダーに対する偏見を是正しようという動きが活発化しています。吉田さんはその一つの現れとして、働く女性をサポートするために「更年期・生理(婦人科診断・ピル処方等)・妊活に関する情報サービス関連を導入する企業が増加している印象がある」と国内の状況を教えてくれました。
このように、フェムテックは産業のデジタル効率化などと異なり、人そのものに関わる社会課題であるという点があります。また「月経ケア」といった女性特有の課題解決を扱うため、どうしても「女性だけ」の話題と考えがちです。
しかし冒頭の調査結果にもあった通り、妊活や不妊のような家族を巻き込んだ話題も多数あります。課題を持つ女性が仕方ないと抱え込むのではなく、家庭や企業など、社会全体でリテラシーを高めて課題解決に向かわなければならない、というのもこのフェムテックの特徴のひとつと言えるでしょう。
解決のアプローチ:日々のセルフケアが鍵に
では国内におけるフェムテックの状況はどのようになっているでしょうか。明治でフェムケア関連の商品開発・研究に携わっていた村上里香さんはセルフケア領域の商品やサービスが増加傾向にあるのではと指摘します。
「月経に関して言えば、古くからある「基礎体温を測る」という手法がある意味フェムテックの一つだと思いますが、最近では、月経に伴う健康状態の変化、妊娠予測や不妊治療の一助となるような機能やサービスが増え、日常の暮らしの中で女性自身の健康を管理するセルフケアアイテムが普及してきたように感じます」(村上さん)。
続けて村上さんは女性の体に関する注目の領域として二つの話題を挙げてくれました。ひとつは妊活・不妊治療分野で、もう一つは若年女性の健康課題になるそうです。
「若い頃にやせた体型を追求するあまりエネルギー摂取が少ない状態が続くと月経トラブルなど、自身の健康に支障をきたします。さらに妊娠前の健康状態が妊娠や出産、赤ちゃんの健康にも影響を及ぼすことが知られています。女性自身だけでなく産まれてくる子や、子の将来の健康を支えることに関してもサポートできるのではないでしょうか」(村上さん)。
こうしたフェムテックにおける健康課題へのアプローチについては、前回のメンタルヘルスケアでも言及があった通り「未病状態」における予防的な方法が多く製品化されています。
国内でも生理の状態を記録する「ルナルナ」や、ホルモン状態を郵送検査できるキットを提供する「canvas」、不妊治療データを解析してくれる「 cocoromi 」など、オンライン相談やスマホアプリなどを使ってセルフケアを促進するツールなどがそれです。またデジタル以外の製品でも例えば明治の「アルファルナ」のように、月経などで起こる心身の変化に対して、日々の食生活から無理せずセルフケアするというアプローチを取ったものもあります。
ということで、ここからいくつかグローバルで展開するスタートアップのアプローチをご紹介していきます。
「体とこころの健康」領域の新たな価値を共創するスタートアップを募集中!
この記事でインタビューにご協力いただいた吉田さん、村上さんが所属する株式会社 明治では、オープンイノベーションプログラム「明治アクセラレーター2022」を実施しています。明治と共創したいビジネスプランを2022年11月29日(火)までお受けしております。
明治アクセラレーター2022 募集サイト