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最新の情報を一元管理し、CVCを加速。InnoScouterの魅力を、トヨタ紡織の事例から探る。

デジタル技術の進化やグローバル競争の激化する現代において、多くの企業がCVCを通じて新たな成長機会を模索しています。ここで課題となってくるのが、スタートアップとの連携や情報共有をどのように行うのかということ。スタートアップは変化の速度が早く、その動向を即時アップデートして最新の情報を常に把握しておく必要があります。

その悩みに応えるため開発されたのが、大手企業のCVCやオープンイノベーション部門向けのスタートアップ連携管理クラウドサービス「InnoScouter(イノスカウター)」です。

InnoScouterの導入によって、オープンイノベーションはどのように活性化したのでしょうか。株式会社ゼロワンブースター 取締役の川島健が聞き手となり、トヨタ紡織株式会社 経営企画部 戦略推進室 室長の大塚大助さん、同 CVCグループ キャピタリスト グループ長の森山朋和さん、同 CVCグループ キャピタリストの小島隼さん、CVCグループの堀内純さんにお話を伺いました。

トヨタ紡織CVCチームの皆さんと、聞き手を務めたゼロワンブースター 取締役 川島健

来たる自動運転の時代に向けて求められるイノベーションを

──まずは、トヨタ紡織さんの事業や、CVCの概要について教えていただけますでしょうか?

大塚さん:当社の事業内容は主に3つで、車のシート、天井や床などの内装、フィルター関連を中心とするユニット事業があります。中でも売り上げが最も大きいシート事業では、国内のトヨタ車の約100%、グローバルですと約90%に供給しており、トヨタのTier1サプライヤーという位置付けです。トヨタの車に乗っていただくと、もれなく我々のシートに座っているというイメージをお持ちいただけると良いかなと思います。

 

今後、自動運転がますます広がるにつれて、車内での過ごし方にも変化が出ることが想定されます。楽しく充実した移動を提供するため、インテリアスペースクリエイターとして内装システム、内装全体の企画開発をしていきたいと考えています。

トヨタ紡織株式会社 経営企画部 戦略推進室 室長 大塚大助さん

大塚さん:当社ではCVCが設立されたのは2021年の4月で、経営企画部の戦略推進室で担っています。戦略推進室には、CVCグループ、アライアンス推進グループそして今年4月にできた未来推進グループの3つがあり、社内の新規事業やオープンイノベーションを推進しています。また、他部署からの兼務も受け入れ、部横断で対応できる体制を取っています。

 

事業会社では往々にして、出資にあたって役員会や取締役会などでの承認が必要になる場合がありますが、当社ではスタートアップのスピードについていけるように、社内2名と社外1名から成る投資委員会を作って機動的に投資判断しています。年間の予算枠は現在10億円で、一件あたりの配分目安は1000万〜3億円です。手法としてはバランスシートを使った形を取っています。ステージとしては、シードからミドルを中心にしながらバランスの良いポートフォリオを心がけています。

——現在の投資実績を教えていただいてもよろしいでしょうか?

大塚さん:設立から3年という時間の中で、現在、取引実績は14社になります。もっとスピードを上げていきたい、と計画を立てているところです。出資先は国内の企業がほとんどですが、2024年6月には初めて海外のスタートアップへの出資も決まりました。

 

ボストンのボイスアナライズの会社で、AIを使って複数の人の声を非常に高い精度で聞き分けるサービスを展開しています。コンセプトが魅力的で、MIT出身の方を中心に行っており、我々のシリコンバレーオフィスが出会ったスタートアップです。これからも海外も含めて投資を行っていくスタンスでいます。

——どのようなカテゴリーのスタートアップを対象にしておいでなのでしょうか?

大塚さん: サステナブルに投資事業をやっていくという観点で、財務リターンも重要ではあります。ただ、我々はCVCですので、スタートアップとの協業やそれによって得た何らかの学びといったシナジーも含めて評価することができます。

 

CVCといえば「事業シナジーがすぐ出る企業に投資する」と言われていますが、我々は将来何らかの役に立つ、もしくは業界の中で何らかの位置付けが出そうな「少し遠い先」にもスコープを広げています。例えば、気球による宇宙遊覧フライトを実現するスタートアップなどは、宇宙空間での過ごし方において将来的に何らかの接点が出てくるだろうと考えて出資していますね。

聞き手を務めたゼロワンブースター 取締役 川島健
——CVCはシナジーをどれだけ必須条件にするかで難しさが変わってくることが多いかと思います。

大塚さん:これは賛否両論あるとは思いますが、投資主導で進めていった上で、事業シナジーが出てくるかどうかを考えています。当然ながら、各キャピタリストが社内のニーズだとか事業部が描いている将来像をインプットされていないととスタートアップの探索はできません。「何らかの将来接点を描けるもの」を想定して活動できていると思います。

——貴社の重点領域はどのようなテーマなのでしょうか?

大塚さん:重点投資分野の1つ目は「ESG関連」です。我々はトヨタグループの中でもCO2の排出は多く、石油由来のものも使っていたりしますから、ここを念頭において探索しています。もう一つは「車室空間」です。トヨタグループの中でどうやっていくかというのもありますし、トヨタ紡織としてもユーザーエクスペリエンスやAIについては力をつけていきたい分野ですので。3つめに「ものづくり」です。ここは人がものすごくやっている業務ですので、ロボティクス化や効率化等、スタートアップが秀でているところを取り込んでいきたいと考えています。この3分野を中心にしつつも、枠を飛び出るスタートアップにも投資しています。

最新の情報を、適切に管理するために

──「InnoScouter」を導入いただいたのは、CVCを立ち上げられて間もない頃だったと思うのですが、ご検討いただいた背景や導入の決め手はなんだったのでしょうか?

大塚さん:私はもともと金融の出身で、投資銀行にいました。投資銀行は1週間、2週間で勝負が決まるという世界です。そのとき一番重要だったのが情報です。その情報をいかにして取ってきて、その情報がいかに整理されていて、取り出したい時に取り出せて、しかも最新のものにアップデートされているか。さらに使いやすいものか。市場の情報とヒアリングしてきた情報が絡み合う形で構成された、精度の高い情報システムと管理システムが一つになったものであることが重要だと考えていました。

 

こうしたシステムを後から導入するのはものすごく大変です。事業が走り始めて2年、3年経ってから、その膨大な情報を新しいシステムに載せるのは工数もコストもかかります。ですから、CVCの業務を始めるときに「投資する前から入れたい」と考えて、そういった機能があるシステムを探していました。

大塚さん:探索した情報を一極集中して、どんどん情報を積み上げていくことが、我々の探索力の強化につながります。

 

例えば、何万社とスタートアップがある中で、5人、10人というチームで探索していくと必ずダブりが生じたり、「ここはすでに3年前にやりとりしたことがあります」といったことが起きたりします。この対策として、「交渉記録がしっかり残せること」は非常に重要です。当社では皆、メールの代わりにInnoScouterに入力するように習慣化されていますので、情報が統一化されて誰もが見られます。

 

また、「案件の進捗状況管理」も非常に重要です。金融の業務は、明確に期日が引かれて対応するものです。そこに間に合っているかどうかの期日管理や、我々の検討状況だけでなく、企業のステージやどのような調達タイミングなのかが管理できる機能も必要になります。今後重要なのは「事後管理」ですね。人間、10社くらいまでは覚えていられますが、今後30社、40社、50社…と増えていくとなると、記憶に頼るのでは難しくなってきます。こうしたツールで管理することで少ない人数でも回すことができますし、しっかりガバナンスをきかせて業務にあたることができると考えています。

CVC内だけでなく、他事業部との連携にも

──ありがとうございます。実際に業務の中でどのように使われているのか、部内のみなさまにも教えていただけますか?

森山さん:出資後のモニタリングをする際に助けられています。スタートアップさんによっては、毎月、株主報告会や財務データなどを送ってきてくださるので、すべてInnoScouterの中で整理しています。

 

また、シナジーを生み出していくという目的のために、どの部に紹介したか、どこの部がPoCを始めた、といった進捗を全て記録して社内共有しよう、という動きも出てきているところです。今後、浸透させていきたいですね。

トヨタ紡織株式会社 経営企画部 戦略推進室 CVCグループ キャピタリスト グループ長の森山朋和さん

小島さん:カスタマイズ性が非常に高いところもメリットかと思います。単純に検索したいとき、進捗をモニタリングしたいとき、競合同士を比較したいときなど、ニーズに応じて最適なUIで提示されるのが良いですね。部内にいろんなメンバーがいますが、それぞれの状況とタスクに合わせ、自分の使いやすさを追求しています。

堀内さん:探索の時、今まで誰がコンタクトしたかがすぐに確認できるので、情報収集がスムーズです。事業部でも情報収集のために活用されているようで、オープンイノベーションにつながっていると実感しています。

トヨタ紡織株式会社 経営企画部 戦略推進室 CVCグループの堀内純さん

すべてが一元管理できることのありがたさ

──大きい会社ですと、CVC内での担当者同士のバッティングだけでなく、いろんな事業が新しい活動をしていると思います。その情報共有のためにも活用できるということですね。

小島さん:情報共有は大事なんですが、その出し方にも線引きが必要なのが、難しいポイントです。最近追加された「限定公開」の機能のおかげで、スタートアップさんからいただいた資料を管理しやすくなりました。

 

InnoScouterがなかったら、多分、Excelで管理をしていますよね。そして、アプローチのたびに「この企業さん知っていますか?」とひたすら社内にメールを送って確認してるんじゃないでしょうか。

トヨタ紡織株式会社 経営企画部 戦略推進室 CVCグループ キャピタリストの小島隼さん

森山さん:情報の管理も、それが出資先なのか協業先なのか探索中なのか、ゴチャゴチャになってしまいそうです。考えてみるとゾッとします(笑)。すべてが一元管理できることのありがたさを噛みしめますね。

小島さん:私は地味に「ダッシュボード」機能をすごく使っているんです。誰がどれだけ検索したのか、どんなジャンルにどれだけの人が興味を持っているのか、ということが一発でわかるので。それを見て、「意外とこの分野は誰も調べてないんだな」「掘る価値があるな」「負けられないな」などと思って、探索に役立てています(笑)。検索の情報まで可視化されているのは重宝しますね。

InnoScouterはこれからどう進化するか?

──みなさんがそれぞれの方法で使いやすさを追求し、フル活用していただいていることがわかりました。今後、こんな機能があったらいいのに、というご要望はありますか?

大塚さん:スタートアップの資金調達の情報等がより詳しくわかると嬉しいです。あとは、一部機能だけでもいいのでスマホで見られるようになるとありがたい。スタートアップさんの会食の時なんかに、パソコン開くわけにもいかないですしね。

小島さん:私は、探索をしていて、ある企業さんがやっぱりダメだった、となったときに、類似の事業でこういう企業さんがあります、とレコメンドしてくれると探索が捗るかな、と思いますね。そうすると、Google検索を使わなくてもInnoScouterさんの中でより完結できるかなと。特許などの情報も、載っていると便利ですし、そこから加速度的に探索ができそうだなと思います。

森山さん:技術的にできるかどうかわからないのですが、類似の企業を表などのビジュアルで比較できるような機能があると良いかもしれないです。

──ありがとうございます。今後の開発にぜひ生かしていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
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