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【J-Startup 採択記念インタビュー】衛星データやAIを駆使、世界の農業を日本から革新するサグリ

サグリは兵庫県丹波市発の岐阜大学ベンチャーで、衛星データをもとに農家が土壌分析を行えるサービス「Sagri」、行政機関が農地調査を効率化できるサービス「アクタバ」や「デタバ」を提供しています。

同社では土壌分析をに基づいて肥料の投入量を最適化するための農学的なアドバイスが提供されます。また、肥料削減への貢献、削減できる窒素量、代替で用いられる有機質資材等が吸収する炭素量を評価でき、農家の収入となるボランタリークレジットも発行可能です。

宇都宮市と01Boosterが共同運営する「宇都宮アクセラレーター2022」、JAグループと01Boosterが共同運営する「JAアクセラレーター第4期」など複数のアクセラレータープログラムに採択され、サグリは近年、地方や農家との連携で社会実装に努めてきました。

そして2023年4月、サグリは経済産業省・日本貿易振興機構(JETRO)・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が運営するグローバルスタートアップ創出支援プログラム「J-Startup」に採択されました。2021年に「J-Startup KANSAI」に採択されていましたが、今回全国版に採択され、名実共に世界を目指すスタートアップ238社の仲間入りを果たしました。

これを記念し、JAアクセラレーター第4期卒業生でもあるサグリの代表取締役CEO坪井俊輔さんに、改めて事業のこれまでと今後について伺いました。

——この事業に情熱を注ぐようになったきっかけを教えていただけますか。

私たちは、兵庫県丹波市にある本社を置いていて、私自身も住民票をそこに置いています。今、日本の農業はスマート農業など先進的な取り組みが進んでいる一方で、高齢化や食糧危機など深刻な問題を抱えています。日本の食料自給率は非常に低く、約6割以上の作物を海外に依存しています。また、65歳以上の高齢者が約7割を占め、農業の現場を次の世代に引き継ぐことや、効率化を進めることが必要です。

そのためには、農家さんの生産現場を改善する技術や、JA さんや市町村さんなどの支援も必要です。しかし、農業はデジタル化が進まない傾向があります。私たちは、日本全国に私たちが開発した技術を広め、グローバルの先進事例にすることで、農家さんの生産現場をアップデートすることを目指しています。そうすることで、農業人口が減少する現状を改善し、作り手の皆さんから感謝されるような状況を増やし、価値ある取り組みをしていると感じることができます。

元々、私たちは農業系ではなく、教育系の会社を経営していました。2016年から教育に戻りたいと思っていたのですが、日本の農業人口が人口の1.4%程度しかいないことに気付き、海外の農業に興味を持ちました。世界の人口の3分の1が農家さんであり、例えばケニアでは70%の人々が農業に従事しています。私が海外で教育をしていた際には、アフリカのルワンダで教育を行い、農業に興味を持ちました。

——元々は教育系の仕事をされていたんですよね?

はい。元々、2016年から教育系の会社を経営していました。今は農業系に来ていますが(編注:サグリの創業は2018年6月)、最終的にはまた教育に戻りたいと思っています。なぜ、今、農業にフォーカスしたスタートアップをしているかをお話ししますと、現在、日本の農業人口は約165万人で、人口全体の1.4%程度しかいないのです。対して、世界の人口は80億人に達し、そのうち約3分の1が農家です。私は、インドやケニアなどを訪れた際、農家の総数が50%から70%にも及ぶことを知り、農業に興味を持ちました。

海外で教育事業を行っていた時に、アフリカのルワンダで小学生たちから夢を語られた経験があります。しかし、中学校や高校に進学せず、親の手伝いをしなければならない現実があり、農家の仕事に従事することになる人が多いことも知りました。農業現場を目の当たりにして、教育だけでは改善できないと感じたんです。子どもたちがどんなに夢を持っていても、環境や生まれた場所によって、その夢を実現できないことがたくさんあるわけです。まずは、現状を変える必要があると考え、農業に没頭するようになりました。

私が選んだ技術は、衛星データを利用したもので、その技術を使うことで世界の26億人の作り手に情報を届けることができます。兵庫県丹波市で農家から学びながら、日本の農業には課題があることに気づきました。しかし、私は日本の農業の課題を解決するだけでは満足できませんでした。私は、それをグローバルに広げて、日本の技術を使って変革することができると信じています。この思いが私の原点であり、現在は教育をストップして、農業にコミットしています。

ケニアのスタートアップ Lentera Africa と提携。
左から:坪井氏、Lentera Afrrica 創業者兼 CEO Moses Kimani 氏、CSO 永田賢氏

Moses Kimani

——この間もケニアに行かれていましたよね?

ケニアでは、我々のテクノロジーを農業関係者に支援を届けるため、現地の農協組織と協力して活動を行っています。また、現地の教育現場を訪問しました。ナイロビには世界最大のスラムであるキべラスラムという場所があり、そこで生活をしている人々と話をし、食料品が非常に高騰していることを知りました。日々の生活で食べるものを自給自足している人もいる一方で、多くの場合は食料品を購入する必要がありますが、原材料の高騰により食料品が値上がりし、中には食料品が入ってこなくなっている現状もあります。

私は、そういった状況下でも、教育を受ける子供たちが夢を持っていることを知りました。しかし、お金の問題から高校に進学することができない子供たちもいるという問題にも直面しました。この現実を大きな課題として捉え、挑戦できる機会が平等に与えられること、何度でも挑戦を繰り返せる機会が必要であると強く感じました。日本ではこれが当たり前のこととして見られるかもしれませんが、途上国などでは家庭の環境などにより、それを目指しづらい状況にある人々もいます。

僕たちの会社では、「人類と地球の共存を実現する」というビジョンを掲げています。今の状況が変わってしまうもののを少なくとも食い止め、次の世代に引き継げるものにしていく。その上で人類の技術が進歩し、変わらない地球環境の中で状況がアップデートされると、最終的には、世界中で一人一人が自分自身のやりたいことを持って、それに挑戦できる社会が実現できる。その兆しが出てきたら、僕としてはすごく幸せで、人生を全うできるように思います。

ケニアの現地圃場での活動風景
——世界の農業を変えつつ、地域課題も解決していく。その世界に向けた試みをが日本から展開されているのはなぜですか?

日本の農業がテクノロジーで効率化されてくると、世界の農業のモデルケースになると思います。生産性の向上もそうですが、地球環境にとってもより良い農業が実装されてくることが理想的です。スマート農業という言葉に象徴されるような、防除(病害虫や雑草を取り除くこと)をドローンで行ったり、収穫を自動・自律で行なったりできる状況が実現されてくると思うんです。まだまだそんな技術に到達できない農業現場は世界中にあるので、日本の農業を取り入れたいという国も出てくると思います。

日本には農協がありますが、海外では農業者の組織というのは国によってバラバラです。民間企業よりも組織化されていないことがほとんどなので、そういった農業の環境整備も含め働きかけていけば、世界の農業は変わっていくと思います。そして、世界中のいろんな国に行くんですが、日本の農作物というのは本当に美味しいですよね。美味しい農作物を海外でも食べられるようにしたいと思います。ちゃんと管理した下で日本の技術を世界に展開していけば、これは日本の農家にとってもプラスになって帰ってくると思います。

——ありがとうございました。

参考情報:サグリも2022年に採択!JAアクセラレーターについて詳しくはコチラ

https://ja-accelerator.agventurelab.or.jp/
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