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企業がスタートアップと手を組むワケ:明治アクセラレーター「事務方」対談(前編)

明治と01Boosterは8月、オープンイノベーションプログラム「明治アクセラレーター2022」の成果報告会(デモデイ)を開催しました。今回で2回目の取り組みとなるもので、共創のテーマは「食」「体とこころの健康」「サステナブル」「デジタル・テクノロジー」の4つ。明治グループが持つ独自の素材や技術、顧客との関係などの資産とスタートアップの持つテクノロジーやアイデアを組み合わせて、新しい価値を創造することが狙いです。

このインタビューでは、明治アクセラレーターを第1期から事務局として支えた井野口萌さんと、第1期に採択され、今年3月には明治との資本業務提携も発表したLaspyの代表取締役、薮原拓人さんにお話を伺いました。

明治はなぜ新しい事業開発にオープンイノベーションの手法を採用したのか。出資にも至ったスタートアップとの具体的な協業までのプロセスと合わせてお伝えいたします。(文中の太字は01Channel編集部による質問)

——明治さんでは社内プログラムとして社内起業家や社内新規事業を作ろうというものと、外のスタートアップと組むという2つの軸を同時に展開されていますが、その意図はどのようなものだったのでしょうか

井野口さん:そもそも社内の新規事業を考えるとき、オープンイノベーションでスタートアップを募ったからといって、すぐに新たな事業が生まれるようなものだとは考えていませんでした。そこで明治をよく知る明治の社員の皆さんにも、アントレプレナー的な活動もできる人材として活躍いただこうという育成の目的もあって、同時に二つを回してみることになったんです。

私は社内新規事業についても、アイディア選定の場などには立ち会わせていただいています。こうすることで二つのプログラムを分断せずに、社内の新規事業の方とスタートアップの方でも交流しながら、一緒にできそうなものはそこで繋ぎ合わせるようにしています。

——元々の井野口さんはどのような仕事をなさっていたのですか

井野口さん:明治と言えば「きのこの山」とか「たけのこの里」とかを皆さん想像されるかもしれません。ただ、私は違っていて、入社以来、カフェチェーンさんや外食チェーンさんにメニューの商材を提案する、いわゆる業務用の営業や開発を担当していました。割と大きな企業だと営業と開発って分断されているように思われるかもしれませんが、当時の所属部署では両方やるのがミッションだったんです。

——イノベーションの取り組みとは全然畑違いですよね

井野口さん:そうですね(笑)。まずはスタートアップについての理解から始まりました。4月に異動してきて、5月にスタートアップ向けの説明会というスケジュールだったので、すごく大変でした。

 

——1年目、プログラムを経験してみていかがでしたか

井野口さん:1期目に関しては人材育成が大きかったなと思っています。12人のカタリスト(事業案に伴走するメンター社員)がいらっしゃいましたが、終わった後の顔つきが違っていましたね。その後に皆さんがいろいろなことに挑戦しているのを目の当たりにするとやってよかったなと感じています。

——1期目は若い女性の方もいれば、営業やマーケティング畑で長らくやっていた方、R&D、あと酪農の方もいらっしゃったと思います。みなさん立候補だったのですか

井野口さん:公募制度で募集をして、事務局の方で採択させていただきました。応募してきた理由は人それぞれでしたが、共通していたのは問題意識を抱えていて、さらに自分が挑戦したいというすごく前向きな気持ちを持っていたことです。

——事務局としてのサポートではどのようなことを心がけましたか

井野口さん:まず大企業で育った我々と、本当に明日どうなるかわからないスタートアップの人たちでは姿勢が違うという部分、あと決して下請けのように扱わないといった部分を01Boosterさんにお聞かせいただいたので、そこは事務局として良かったなと思っています。

ただ、いざ自分たちが関わってみると、仕事の進め方のスピード感とかやはり全く違うんですよね。伴走しているカタリストは戸惑いつつ、慣れていきながら一緒になってやっていました。

 

井野口さんが事務局として参加したCBDドリンクのLeaflow(写真は代表取締役・創業者の長森ルイさん)

——Leaflowの)長森さんのサポートをされていた様子を見ていましたが、ものすごいスピードでキャッチアップされて一緒に働いてた感がありました。変化していく過程を見てどう思いましたか

井野口さん:表現が正しいのかわかりませんが、学校の先生とかメンターってこういう感じなんじゃないかと思いました。カタリストの皆さんが成長していくのが手に取るようにわかる感じでした。

プログラムが終わってすぐ新規事業、アウトプット!となると、もう少しレイター期のスタートアップを採択するべきなのかなと思いますが、人材開発が目的のひとつだったので、将来新規事業を生み出していくであろう人材の育成ができたり、さらにCBDなど未知の領域、飛び地の領域を知れたのがオープンイノベーションの成果だったのかなと思ってます。

——あと女性の研究者の方が入ってくださっていて、女性陣が生き生きしてたのがすごく印象的でした。研究開発とかでもすごく活躍されてる方が多いんだなと驚きました

井野口さん:研究所はものすごく女性比率が高いですね。第1期は特に若手の女性がいて、ライフステージで産休に入ったり結婚したりとかいろいろ変わると思いますが、気兼ねなく活躍できる場を用意できることがすごく重要なのかなと思いました。

——無理なく参加できて、戻ってきた後でもう1回新しいことやりたいと思ったときに、力が発揮できる場があったらいいなと思いますね。明治さんらしくて、温かい感じでいいなと。具体的にプログラムが終わった後に何を始めたのかなどお話できる範囲で教えていただけますか?

井野口さん:今回のプログラムにカタリストとして参加した後、チーズに合うスパイスを開発して売っている方がいらっしゃいます。なかなか新商品を支社単体で出すということはないんですけど、自分の業務に戻っていろんなルートを使ってそれを実現させたそうです。

——今後、カタリストの方が「自分でこんな事業をやりたい」と着想して、新規事業創出プログラムの方に応募するみたいなループが作れたら面白いですね

井野口さん:それはすごく考えていて、今回のようにイノベーション人材がうちの中にどんどん増えていくと会社全体が変わっていくかなと思います。最初は手探り状態で、とにかくプログラムを回すことで事務局としては精一杯でしたが、第1期の繋がりとか、ご縁あって出資をしさせていただいた会社さんもありますし、出資までいかなくても、その後カタリストが繋がるところで協力させていただいてる会社さんがあるので、そういうのが増えてくるといいなと強く思いましたね。

——ありがとうございました

 

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