エネルギー企業がカーボンオフセット事業に取り組む価値:テックシンカー/北陸富山・日本海ガス絆HDと共創6社 #NGAS2023
テックシンカーは企業や個人がCO2排出量を可視化し、カーボンクレジットを購入してオフセットすることができるプラットフォームを展開する。例えば企業が自社製品やサービスにカーボンオフセットを付加することで、環境価値を高めることが可能になる。富士電機などでカーボンクレジット事業に携わった洪偉豪(コウ イゴウ)氏が2022年に設立した。
2020年に菅内閣が打ち出した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに温室効果ガスの実質排出量をゼロにすることを目標にグリーン成長戦略が策定されている。ただし、物理的に温室効果ガスの排出を完全になくすことは難しく、排出を避けることができない場合にその排出量に応じた削減・吸収プロジェクトを支援する「カーボンオフセット」の取り組みが広がっている。
カタリストとして参加したネクストプラス取締役の牧田拓郎氏が、カーボンニュートラルへの「最後のピース」と語るのがまさにこの手法なのだ。
オフセットする方法はシンプルだ。日々の活動から得られるデータを用いて排出されるCO2を算出し、オフセットプロジェクトを策定する。国内外の認証機関による検証を経ることで、登録済みのカーボンクレジット提供が可能となる。テックシンカーではこれらのコンサルティングなども請け負っている。
温室効果ガスの排出制限には国際的な基準として「スコープ1」「スコープ2」「スコープ3」という分類方法がある。「スコープ1」は製品の製造などを通じて企業・組織が直接排出するもので、「スコープ2」は他社からの電気やエネルギーを使うことで間接的に排出されるものを指す。これらは省エネや高効率システムの導入である程度の削減が可能だが、その先、スコープ3になるとサプライチェーンに乗っかる原料から廃棄にいたる全てが対象となる。これをオフセットするソリューションがカーボンクレジット、というわけだ。
「いくら高効率でシステムを使ってもなかなかゼロにはならない。そこでですね、やはり適切にカーボンクレジットのセットを活用することでカーボンニュートラルの実現を図りたいと考えております」(洪氏)。
今回の実証では、主に日本海ガス絆HDの顧客基盤を活用したカーボンオフセットのニーズ検証が実施された。参加した一社、自動車の部品メーカーにはそもそも取引先からの脱炭素の要請がある事情があった。そこで社用車やフォークリフトから出るCO2のオフセットに取り組んだ結果、排出量の可視化に成功し、数カ月にわたって約9tをオフセットすることができた。これには地元のカーボンクレジットを調達することで、排出量に対する相殺を実現している。取り組み内容は広報され、企業ブランドの価値向上にも繋がったという。
一方、全ての企業がカーボンオフセットに前のめりかというとまだまだ検討の余地がある。そもそもスコープ1や2の段階の企業がいきなりオフセットに進むかというとその前にやることがある。洪氏は状況をこう説明して締め括った。
「カーボンニュートラルに向けた活動中の初期段階のお客様に対して、オフセットはまだじゃないかなと思います。一方で省エネや高効率の設備を導入したお客様に対しては、そもそもこれ以上の(カーボンニュートラルへの)施策はなかなかない。期待できる商材になるのではないか」(洪氏)。
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